123 アバンの収穫を手伝いましょう
「ということでですね。おとなしく私と一緒に来てもらいたいんですが」
アバンの目が妖しく光る。
「せっかくのお誘いだが俺はここが気に入ってるんでね」
「おやおや、その場合有無を言わさず連れていくか強制的に連れていくかの二択になりますよ?」
「それは実質的には選択肢になってないだろうが……まあ、あんたにそれが選べるなら、どちらを選んでもらっても構わないぜ」
アバンも底が見えないから、もしかしたら何とかする手段の十や二十持っているのかもしれないが、今のところすぐに何かをするようには見えない。もしかすると“収穫”とやらの溜めにはあまり無理ができないのかもしれないな。
「……連れていかれちゃ困るんだけど」
女の子が横から口を挟んだ。しかし
「あなたには興味がないと言ったはずですが」
アバンが男だけを見て言う。
「その女な、言うほど悪くもないぞ。多少面倒なので一度は谷に捨ててきたんだがな……その魔剣持って戻ってきやがった」
「ほう、って、あなたがわざわざ捨ててきた、と? 他の吸血鬼はそのへんに転がしてるのに?」
「ああ、あれは特別製だ。尤も一人では谷底から上がってこれなかっただろうけどな」
あ、これはよくない流れだ。アバンの興味が女の子の方にも向かっている。浮気は良くないぞ。
「なあ」
ということで、とりあえずアバンに声をかける。
「アバンはその兄さんを収穫? よくわかんないけど確保したいんだよな」
「ええ、そうですね」
「俺はその女の子の方に興味がある」
それを聞いてピンクの魔剣が声を上げる。
「だから先約があると言っておろう」
が、俺もアバンもそれを無視して話を続ける。
「マスター殿ならなんとかできる、と?」
「がんばれば多分。とりあえずその兄さんを無力化するので後は好きにしてもらってかまわない。かわりに女の子の方は俺が連れていく、というのはどうだろう」
「……いいでしょう」
さて、何とかなるとは思うんだけど、収穫ってのの邪魔しないように程よく無力化しないといけないんだろうな。普通に殴りあう程度なら問題ないんだろうけど、それだと負けないまでも勝てもしない気がするし、うーん。
……ところで魔剣の方もついでに貰って行っていいのかな?
「先ほども言いましたが、趣味の悪い魔剣に興味はありませんから」
趣味の良し悪しはともかく、俺は結構好きだけどな。さて。
「で、収穫するにあたって、気を付けることはあるかな?」




