119 カルドの黒王対策分室拠点
カルドにある黒王対策分室の拠点。
「ということで、次の依頼を受けてラパンはマスターさんを追うぴょん」
ラパンが新たな指名依頼についてメンバーに説明していた。
「何がどうなってそうなるのかは分からんが、でかした」
「とりあえず我々が追ってるのはそのマスターで、それは今冒険者をやってるんだな」
「しかし、何故あのミイラと茶飲み友達のような事になっているんだ」
「それはラパンにもわからないぴょん。ただあのミイラ……アリシアはあの城からあまり離れたくないんだと思うぴょん」
あれだけマスターマスターと言っているのに自分は城から出ようとしなかったのをラパンは不思議に思っていた。あるいはあの能力は黒王の棺の近くでしか発揮できないのかもしれない、そう思いかけて、今いるカルドで起きたことを思い出す。彼女は少なくともカルドまで来て武装神官達を軽くボコボコにして悪霊を連れ帰ったはずである。遠出できないということはないはずだ。
「あああとそのマスターさんの本体は玉座に座ってる股間の光るスケルトンだぴょん」
一瞬分室のメンバーが無言になった。顔を見合わせた後
「ラパンちゃんって、ちょっと下品な冗談が好きなのかしらね……?」
「万が一本当だとしても、それはちょっとなあ……」
「ですよね……」
パメラ、ヴィム、アレクが呆れたように口にする。しかし
「ん? ……玉座に本体のスケルトンがあって、それは置いたままマスターは別の体で出かけたってことですよね」
ウトバムが何かを思い出したような顔をした。
「マスターは黒王ではない、という話ですが、その体は黒王のものかもしれないですね」
いっしょにするなと言ったミイラを思い出す。そしてそれを聞いたアレクも
「であれば黒王とマスターは全くの別物ではなく、ある程度つながりを持っている……ということでしょうか」
直接手は出せないが、何かしら対抗するきっかけぐらいにはなるかもしれない。
「ええと……今はキリタチという名前したっけ、辺境伯の屋敷のあった街は」
ウトバムとしては、自分たちはカルドからあまり動きたくないと思っていた。カルド国教会の動きも気になるし、そもそも王国内に拠点を置くと身動きが取りにくい。ほどよく国外でもあり、黒王の棺ともそれほど遠くない今の拠点が最適だと思っている。しかし、それはそれとして、近くで情報収集できる人間はいた方がいい。
「あそこにも冒険者の店ができるかもしれない、という話でしたね。そちらの方にちょっと話通しておきましょうか。我々はまだしばらくこの拠点から動けないですし」
そして顎に手をやりながらこう言った。
「それにしても、そのマスターの近くにいるかもしれない誰かって、何者なんでしょうね? 魔術に関して言えばかなりの知識と能力を持っているはずのミイラを出し抜いてマスターの近くにいるんですよね」




