115 ガールズトーク
「へーそれでそれで?」
アシュの声がホールに響く。
「ニワトリみたいなバカ貴族だったぴょん! 『喜べ!お前は俺に選ばれた!』みたいなこと言ってたぴょん」
「で、ラパンちゃんはそのバカを細切れにしたの?」
「してないぴょん! そういう目的のためだけに作られた馬車で、振動もほとんどない上に広いベッドがあるんだぴょん。当然その馬車で街まで送ってもらうぴょん?」
「あー、そういう方法もあるのかぁ。でも体と引き換えというのはちょっと……」
「ちがうぴょん! そんなことはしないぴょん! ちゃんと脅したぴょん!」
ちゃんと、とは何だろうか。なにはともあれ、ガールズトークは盛り上がっていた。
「そういえばラパンちゃんって不思議な術を使うわよね」
「一応死霊術師って言われてるけど、マスターさんとかイライザさんを動かしてるのとは違うぴょん」
「死霊術って言葉自体、雑な分類だもの。あまり人が扱いたがらない、死を扱う魔術をまとめてそう呼んでいるだけでしょう。神殿も、一般の魔術師も、あの錬金術師さえ大半はあまりちゃんと知ろうとしないって言うわね」
「似たような術を使う人には会ったことないぴょん。でもサラさんの呪符はちょっと近いものを感じるぴょん」
「あれは……いえ、そうね」
マスターの夢の中にしかないはずの術に近いものを目の前の兎耳少女が使っている、というのはさらっと流すには奇妙が過ぎる、アリシアはそう思った。が、今は口にしない。
「サラちゃんが帰ってきたら会ってみる? それか……ラパンちゃんもマスターのところに向かってみる?」
「え、でも、今のお仕事はこの玉座の防衛だぴょん?」
視線の先には股間が淡く光るスケルトン。
「一旦達成にしちゃいましょうか。せっかくだし、私が玉座を狙うわ。ラパンちゃんは阻止してちょうだい」
「は?」
ぴょんを忘れた。
◆◆◆
「……今度こそ死ぬかと思ったぴょん……」
「死んだら死んだで私たちと一緒にマスターにお仕えするのも楽しいと思うのよね」
無駄だろうとおもいつつ対策してきたこともあり、またアリシアが本気ではなかったこともあり、一応ラパンの玉座防衛は成功した。
「……そのほうが強くなれそうな気はするぴょん……」
ラパンは服の乱れも直さず、仰向けにひっくりかえったままつぶやいた。正直服を気にする余力など残っていない。
「……とりあえずサインください、だぴょん」
冒険者の店の、依頼確認書類である。これにサインをもらって、最寄りの冒険者の店に持ち込めば依頼完了となる。
「つぎの依頼はマスターの護衛かしらね。やっぱり冒険者の店の支店が近くにあったほうが便利よね……」




