表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死霊王に俺はなる!  作者: 城乃山茸士
死霊王の目覚め
112/142

112 エルシャもミノンに向かうようです

「おかえりなさい、エルシャ」

「なんとか返ってきましたが! 得るものは多かった!」

「あなたがそう言うのは珍しいですね」

「ええ! ええ! 学ぶことなどもうないと思っていましたが!」


「ならば良い経験でしたね。普通は気付いた時には手遅れなのですよ」

「神の御業のいと尊きこと! ですね!」

「ええ。幸いなるかな。あなたがより高みを目指すなら、私たちはより遠くまでその手を伸ばすことができるでしょう」

「ああ、そういえば!」


 エルシャは振り返る。


「黒王の棺の主人ですが! 黒王ではないそうです!」


 そう言うとそのまま部屋を出て行った。


「落ち着いて話してくれると、もう少し話しやすいのですけど……」


◆◆◆


 水は大聖堂の周囲を満たし、地下に流れ込み、この暗闇の支配する部屋も含むいくつかの部屋を通り、そして地上へ組み上げられる。その循環自体に意味があるのだが、それは神殿の教義とは関係ない魔術回路の一部を構成している。


「最初から、そう、最初から間違っていたのですよ!」


 エルシャの声が響く。音を遮るものも、吸収するものもない、水音の途切れない部屋。


「私はしばらくミノンへ行きます!」


 暗闇のなかでエルシャは宣言する。それを聞くものがいるのかいないのか確認もせずに、言葉を続ける。


「今の神殿の知識だけで、神の敵を討つことはできません! それは、神の力が足りないのではなく! 人が神のあり方を誤解し! その知識を分断し! そして神の御心から離れているからですよ! 大聖堂とて同じことです!」

「あの、それは神殿批判……」


 気の弱そうな声が返ってきた。誰かいるようだ。


「だまらっしゃい! 人が、人の組織の在り方を批判して何が悪いのですか!」

「だからといって、よりによってミノンとは……」

「神の奇跡も魔法も何もかも、等しく理解し解析し自らのものにしようとする! その姿勢こそ今の私のは必要なのです!」

「さすがに異端異教にまで手を出すのは……」


 気弱そうな声を遮る、自信にあふれた声。もう一人いる人物は強い立場を持っているようだ。


「異教の術がただの気休めのラクガキなら研究に値しないだろうね。でも実際に何かの力が動くから彼らはそれを術として使える。つまりは、それもまた、神の御心に沿う世界の仕組みには違いないのだろう。エルシャはきっとそう考えてるんだよ」

「しかし……」

「考えてごらん。異教徒もまた、神の作られた世界、神の奇跡の内側に生きているんだ。彼らの崇める神が、祀る像が偽物であっても、その力はどこかから出て何かを起こす。それを研究した成果があるなら、それは使えるかもしれないだろう?そしてその結果ぼくたちの聖女がより強くなるなら、それは神の御心に沿う行いだということだよ」

「私の! 私の聖女ですよ!」


 エルシャがこだわりを発揮する。組織の中でそのような私物化が許されるはずはないのだが


「ああ、そうだねエルシャ。君の聖女、君の聖女たちだ」


 立場のありそうな声の主があっさりと肯定する。


「ということで、しばらくここを開けますので、後のことはお願いしますよ!」

「ああ、まかされよう。それでいいね」

「はい……仕方ないですね……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=476437095&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ