109 退屈しのぎに呼んじゃいましょう
「指名依頼?だぴょん?」
「兎耳つけてピョンピョン言ってる女冒険者の個人指名、って言ったらまあ人違いってことはないだろうな」
回復魔法かけまくりでなんとか歩けるようになったラパンが冒険者の店で依頼ボードを冷やかしに来たところ、店主に声をかけられたのだ。ちなみに兎耳は新しいものを頭につけている。
「生気のないおっちゃんが来てな……正直なところあれ、まともな人間じゃない気がしてるんだが……あと依頼もまともじゃねえんだが……様式はきちんと整ってるし、断る理由もなくてな」
うさんくさい依頼も含めて、仕事を頼むのも受けるのも基本的に自由、それが冒険者の店である。そしてラパンもそこに登録する冒険者たちの一人である。それなりにその流儀というのもわかっている。
「ありがとうだぴょん!」
◆◆◆
「まあまず間違いなく、例のミイラでしょうね……」
話を聞いたウトバムが天井を仰いだ。ヴィムも首をひねる。
「それにしても、何を考えてるんだか」
「しかし指名依頼の形をとられると、断るのもなあ……いや一応正当な理由を用意して断ることもできなくはないが」
依頼内容は玉座の防衛。場所は黒王の棺。
「断るつもりはないぴょん。っていうか、もう受けてきたぴょん」
「マジか……しかしバカみたいに強かっただろアレ。勝てるのか?」
「勝てないぴょん。でも、殺すつもりじゃないと思うぴょん。それに黒王の棺の玉座、見てみたいぴょん」
「確かにそうそう気軽に遊びに行ける場所でもないし、押し入るのはどう考えても無理だしな」
ウトバムが視線を天井からラパンに動かした。
「じゃあ、ついでにできるだけ色々話を聞いてきてください。分室としても対価は払いますので」
「おいおい……」
「もちろん身の危険を感じたら帰還を最優先にしてもらってかまいませんよ」
「身の危険を感じたら……次は逃げ切れる気がしないぴょん」
パメラが目をうるうるさせながら両手を目の前で組む。
「ラパンちゃん、しなないでね」
「縁起でもないことを言うんじゃないぴょん!」
◆◆◆
「名目は玉座を守ることにしたんだけど……」
「何か気になるかな?」
「そういうわけじゃないんだけど」
淡く股間の光る骨を見やりながらアリシアがため息をつくような動作を見せる。
「ちょっかいかけたら、あのうさぎさんはがんばって守るのかなあって」
「暇つぶしって、そういう意味だったの?」
「……冗談よ」
「……ぜんぜん冗談に聞こえなかったんですけどー」
「20%ぐらい冗談よ」
「八割本気じゃないの!」
すみません、あやうくすっぽかすところでした!




