108 三者三様
予定通り、三日。
「届きました」
水音のする、真っ暗な部屋。
「ではそれをこちらへ」
暗闇の中で、金属製のカプセルが手渡される。そしてそれを開く。中にある何かを取り出すために。そして。
闇と同じ色の魔法陣がそこに展開される。
「私だ! 私だ! ここに在るのが私だ!」
それは、エルシャと全く同じ声をしていた。
◆◆◆
同じころ、カルド国教会。“使者”の男はフィオナの執務室にいた。
「なるほど、やはり悪霊はあそこに連れ去られていたかい」
「悪霊との関連を聞いた者がいたそうです。それで興味を持ち、連れ帰ったと……」
「それであっさりうちの神官と王国の連中をぷちのめしちまったのかい……それをやったのはそのミイラなのかい?」
「はい。魔力紋は一致しています」
フィオナはため息をついた。
「何にしても、しばらく手出ししてこないならそれでいいか……今すぐ同行できる相手でもなさそうだしね」
「例の吸血鬼反乱の話をしたので、興味はユーグゼノに向いたようです」
「じゃあ今のうちだね。その、なんて言った? 黒王の棺の近くにある街」
「今はキリタチというそうです」
「そのキリタチにも神殿はあるんだろう? まあなくても最低限のシンボルさえ用意すればいいんだが、ちょっと仕掛けを頼まれてもらえないかい?」
男はにっこりと笑ってこう答えた。
「私がフィオナ様の指示に従わないことなどありえませんよ」
◆◆◆
マスターの旅は順調なようだ。ということは、留守番組の退屈も継続している、ということでもある。勿論マスターを眺めているのは楽しい。それはとても幸せな時間だ。が、それでも。彼女たちはもっと刺激が欲しい。
「いいことを思いつきました」
「いいこと?」
アシュの声が返ってくる。
「うさぎさんを呼んじゃいましょう」
「うさぎさん……ああ、例の。でもそれは……」
アリシアがその女の結界にしばらく閉じ込められていたのは知っている。あと、その女がすごい勢いで飛んで行ったのもアシュは見ている。死んではいないようだが、飛んでいく彼女は生き物としてあっちゃいけない形をしていたような気がする。
「……生きてるのかなー」
「一応生き残るつもりで自分を蹴り飛ばしたみたいですし、先に逃げた仲間がいるはずなので、きっと今頃ピンピンしてるんじゃないでしょうか」
そしてアリシアはいたずらっぽく人差し指を立てると
「ということでですね……指名依頼を出そうと思うんですよ」




