104 錬金術師の事を聞きましょう
沼地に生えたブロッコリーの相手を適当にこなしながら、俺たちは速足で湿地を進んでいた。少し前からアリシアとのつながりが薄くなっているような気がして、それは少し気がかりだが、完全に切れてる感じではないし、アリシアだし、問題はないだろう。
「そういえば錬金術って結構大きな組織なんだっけ」
「そうですな。錬金術師の数はそれほどでもないですが、知識の共有のために大半が錬金協会に所属しておりますぞ。我々は真理の探求を第一に求めますからな」
アリシアが以前微妙な顔をしながら教えてくれたのを思い出す。信仰とは相容れないんだろうってのは、まあわからなくもない。
「錬金協会に興味がおありですかな?」
「前に少し話を聞いたことがあるぐらいかな。興味はまあ、なくはないな」
だって錬金術だよ。オトコノコの夢じゃない?そうでもないか。俺にとっては結構わくわくするワードなんだが。
「金は作れませんぞ」
「やっぱり?」
世界が変わったからと言って、物理法則が大きく違いわけでもないなら、金を生み出すとかそう簡単にはできないんじゃないか、と思っただけなんだけどな。それに、金を作るのが錬金術だってわけでもないだろう。
「ほう……ある程度ご存知ですかな、錬金術について」
「まあ、いろいろと? 噂程度には」
異世界での記憶だの勇者召喚だのって話はとりあえず伏せておこう。俺もよくわかってないし。記憶もそこまでクリアに戻ってるわけじゃないしな。
それにしても、俺たちはともかくこの錬金術師も当たり前のように同じ速度で湿地を歩いてるな。人間……だよな?
「ん、何か」
「いや、こういう所歩きなれてるんだなって」
さすがにお前人間かよ、とは聞けない。
「我々錬金術師は様々な材料を使いますからな。結構色々なところに出歩くものなのですぞ」
そうなのか。どっちかというと研究室みたいなところにいて、材料なんかは人に集めさせるのかと思ってた。
「勿論部屋にこもりっきりの同業者もおりますが」
そっちのほうが俺の錬金術師のイメージには近かったが、主流なのは自分で取りに行く方なんだろうか。
「一度ミノンのアカデミーにも遊びに来ていただけると良いですな。本当にいろんな同業者がおりますから」
アリシアがそういえば教育機関もあるとか言ってたな。
「そのうち……っとぉ」
泥が揺れる。地震……いや、これは。
「これは……泥竜ですな」
「竜なの?」
「いえ、名前こそ竜とついていますが……まあ、おおきなトカゲの類ですな。ただ……」
四人が同時に後ろに飛ぶ。直後、目の前の広い範囲の泥が纏めて跳ね飛ばされる。
「本当に、おおきいので」




