01 骨なんですけど。
いや、うん。
ないわー。これはないわー。
目が覚めるとそこは廃城でした、ってか。
寝てたというか、何かこう、意識をしばらく失っていたような感覚。布団の中ではなく、それなりに立派「だった」椅子の上で俺は目覚めていた。ぼろぼろだ。こんなところで寝た覚えないしな、と思いながら、いつここに座ったのか思い出そうとするのだが、どうにも思い出せない。ただなんとなくこう、「お約束」はどうした、みたいな気分になる。お約束って何だ。見回しても誰もいない、だだっ広い部屋の、かつては途方もない高級品だったであろうぼろ椅子に座って。
「どういうことだよ」
勝手に声が出た。
ぼんやりした頭が少しだけクリアになってきたような気がするのだが、少なくとも今いる場所に心当たりはない。こんな場所で寝落ちるとも思えない。寝落ちるならせめて……
「あいた」
頭にずきっと痛みが走る。何かまとまりかけたものがどこかに消えていくのを感じた。少しイラっと来つつ、正面の扉の方を見る。この距離、広さ、なんだか謁見の間みたいだな、と思う。あの扉の外はどうなってるんだろうな。
「よし」
ゆっくりと立ち上がる。埃が舞う。うたたねしてたとかそういう感じじゃないな、これは。二、三歩前に出る。なんかいろんなものが落ちて、粉が舞う。身体が鈍い、しかし軽い。恐る恐る下を見る。
「なんじゃーこりゃーーーーー!」
俺は叫んでいた。叫ぶよね。そりゃ叫ぶとも。
基本的に骨。いわゆる骸骨。それにぼろ布が少しまとわりついている。それが、俺の体だった。何年寝太郎だよ。何太郎だよ。どんな寝方したらこんなことになるんだよ。
「まあ、考えても仕方ないか」
とりあえず歩けるんだし。扉まで行って、開けてみよう。外を見てから考えよう。扉の前で手を伸ばす。骨だけの手を見てびくっとなる……いや、当然っちゃ当然なんだけど、心の準備不足。
「そりゃ骨だよなあ……」
ついたつもりの溜息は、実際には多分何も出ていない。まだ確かめてないけど顔も骨なんだろう。これが顔だけ瑞々しい肉だったらそのほうが気持ち悪い。
気を取り直して扉に手を当てる。重そうな扉は思いのほか簡単に開いた。
まずはこの城を見て回るしかないか。