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ジジイの目覚め

二話投稿!駆け足で少し変になってるかも知れません

次で久音と聡一を会わせる予定です。

誤字、脱字等ありましたら報告頂けますと幸いです。

ふと目が覚めた。

ぼんやりとする頭を上げると、そこは雲の中に似ていた。

空も地面も、見渡す限り真っ白だ。


ムクリと起き上がると、白い地面はふわふわと形を変える。

「なんじゃあ?こりゃあ・・・」

自然と声が漏れた。



「あ、あのぅ・・・」

暫くぼんやりと辺りを見渡していると、不意に後ろから声を掛けられた。


「お?」


振り向くと、女が居た。美しい女だ。白い羽衣を羽織り、足元まで伸びる黒髪は艶やかに輝く。

一つ残念な事を言えば、女は猫背で、自信無さげうつむいてはに指先をチョンチョンと弄っている事か。


「あのぅ・・・ですね。し、しどうそういちさん、ですか?」

しどうそういち、獅童聡一。そうだ。俺の名前だ。


「そうだが、お前さんは?」

そう言うと、女は安心した様に少し顔を上げた。


「良かったぁ、あなたが新しい仲間ですね。安心しました!軍神として来る位だからスサノオみたいな怖いのが来たらどうしようかと思ってたんですよぉ!」


「仲間?軍神とは一体、お前さん、何者だ?」


「あ、申し遅れました!私、日の神のアマテラスと申します!本日は人の世で新たに"神"が生まれたという事でお迎えとご挨拶に参りました!」


・・・この女、ヤバい輩かも知れん。

昔から神を名乗る馬鹿と刀を持った酔っ払いには近付いちゃいかんと爺さんから聴かされていたが、よもや一生会わんと踏んでいた方に出会うとは・・・


「・・・あー、そりゃ人違いじゃなぁ、やっぱりわしの名前は山田太郎じゃったわ」


「・・・へ!?」


「悪いが他を当たってくれ、残念じゃがわしは只の通りすがりの平凡な人間なもんで」


「え!?いや、でも今しどうそういちって・・・」


「人間、ちょっと名前間違える事位あるじゃろ」


「ないでしょ!?ちょっとどころか一文字も合ってないんですけど!?」


「わしにとっては些細な間違いじゃ!わしはかつおぶしをおかかと言い間違えた事もある!」


「それ同じでしょ!?同じものでしょ!?」

女が腕を掴んで来る。


「お願いしますよおぉぉ!あなたが来ないとつっくんに怒られるのおぉぉ!」


最早神らしさなど皆無である。本気で泣き、綱でも引く様に体重を掛けて引いてくる!・・・が、悲しきかな、女は軽かった。


「ええい放せ!神を名乗る様な胡散臭い女にホイホイ付いていく阿呆がおるか!」


「ひどい!?私本当に神様なのに!じゃ、じゃあ一瞬!一瞬で良いですから、つっくん連れてくるので待ってて下さい!」


これは・・・チャンスかもしれん!


「本当に一瞬か?」

「一瞬です!」


数秒、考える様なフリをして、もう一度口を開いた。


「・・・いいじゃろう」

「本当ですか!?」


女の顔がパァッと明るくなる。見事罠に掛かってくれた様だ。


「ほ、本当ですね!?」


「あぁ、わしは人との約束は守る男じゃ、ほれ、わしの気が変わらんうちに早よう行け」


はい!と威勢の言い返事をして、女の姿が掻き消えた。


「消えた!?ま、まぁいいか、今のうちに早いとこ逃げねば・・・」

「戻りました!」

「早ッ!?」


ここまで早いのは予想外!横には全身黒ずくめの大男を連れてきている!


「ところで何処に向かおうと・・・まさか逃げようと!?さっき約束したのに!」


「う、うるさいわ!お前神なんじゃろ!わしは"人との約束は守る"と言ったんじゃ!」


「ひどい!そんな人だったなんて!」


「胡散臭い女の話なんぞ信じられるか!わしはまだ死にとう無い!嫁貰って子が出来たばかりなんじゃ!」


逃げるが勝ちという言葉もあるのだ。第一明らかにヤバい見た目の大男なぞ相手にしたらそれこそ殺される!


「さらば!」


「あ、ちょおぉ!」


走る!走る!ただひたすらに!


「走・・・あ、あれ?」

不意に浮遊感が襲ってきた。

足元を見れば雲の下に海と山が見えた。


サァッと血の気が引く。

体が落ちていく。

ぐんぐんと地面が近付く。


「死ぬうううぉおおあああ!」


俺の意識は、そこで途切れた。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

・・・新しい仲間が落ちていく。


アマテラスは真っ青な顔をしながらぶるぶると震えていた。


顔を上げた視線の先に居たのは、顔まで黒ずくめの大男。


片膝を突いて聡一が落ちていった穴を見つめながら、微動だにしない。


更に表情の一切が読めない事が、むしろ恐怖心を煽っていた。


「あ、あのですね、つっくん。こ、これは私、あ、あんまり悪く無いかなぁ・・・」


「・・・」

「な、なんて」

「・・・いいよ」

「・・・へ!?」


「どっちにしろ一番最初に降りてもらう予定だったし、今回はいいよ」


アマテラスは深く息を吐いて安堵した。


「よ、良かったぁ・・・私てっきりつっくんに怒られ」

「ただし」


ふへッと変な声を漏らしてアマテラスが硬直する。

黒ずくめの大男が首だけ動かしてアマテラスを見た。


「お説教はさせて貰うよ」

「え?え?いや、でもですね・・・」


アマテラスから面白い様に汗が吹き出て来る。


「ここ数年」

「へ?」

「スサノオを酒で釣って天岩戸の入り口を守らせ」


大男が立ち上がった。


「中に誰も入れず」

「・・・!」

「"岩戸は開けてあるからいいでしょ"なんて言ってさ」


大男が一歩踏み出す。


「流石に今日は出て来て貰わないと困るから出て来て貰ったらこの有り様」

アマテラスがヘナヘナと尻餅を突く


「何をしていたのかさっき軽く調べたら」

大男が一歩踏み出す。


「まさか人の世の"ねっとげーむ"なんてものに手を出して」

もう一歩。


「太陽神が"こみゅ症"の"にーと"だなんて、本当、どんな冗談だろうね」

「・・・!」


「ねぇ、姉さん」

「ごめんなさああああい!!!」




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