祖父の話
初めまして、黒狐と申します。
昔から物語を作るのが好きで、今作は数年前に妄想したものをベースとして執筆しております。
公に作品を出すのは初めての為、至らない点、数多有ると思いますが、どうか宜しくお願いします。
祖父の話をしようと思う。
私の祖父、獅童聡一は40年前の戦争を集結へ導いた英雄だ。
当時を知る人間に知らぬ者は無く、軍は彼を軍神とさえ評した。
曰く、まともな脱出装置やパラシュートすら未発達な時代に、更に一世代前の偵察機を、攻撃と機動性に特化させる形で徹底的に改造を施して運用していたらしい。
そして優しく、おおらかで、大の酒好きだったという祖父は、終戦と共に死んだ。
最後の戦闘を終え、いつもより一層ボロボロになって飛行場に帰って来た祖父の戦闘機は、着陸に耐えうる状態では無かった。
着陸と同時に脚が吹き飛び、翼が地面と接触して折れた。
プロペラが火花を散らして機体から離れて彼方へと飛んでいき、ギャリギャリと胴と折れた翼で地面を削って、祖父の機体はようやく止まった。
祖父の戦友達が急いで駆け寄ると、祖父は頭から血を流しながら、安心したように目を瞑り、大きく息を吐いた。
だが、祖父が再び息を吸う事は無かったそうだ。
そうして終戦と共に無くなった祖父は、国と空の守り神として、戦の神として本当に神様になった。
祖父の住んでいた家は神社になり、戦争で亡くなった全ての命を祀り、同時に空に平和をもたらしす神として祀られた。
そのせいか、当時父を身籠っていた祖母は大層困惑したそうだ。
祖母の幼なじみであった祖父が終戦と共に亡くなり、悲しみに暮れていた所でいきなり家が立派な神社になったのだから。
幸い近所の人々は強力的で、祖母は立派に父を育て上げる事が出来た。
――時は流れ現在。私、獅童久音は実家である獅子守神社で巫女をやりながら、この春高校生になる。
父は空軍に務めた後、神社で宮司をやっている。
祖母はのんびりと家で余生を楽しみ、母は世界中を飛び回る人気写真家だ。
神社も昔と比べてかなり大きくなった。
参拝客が増えた事もあり、神社は元の場所から少し離れた小山の頂上を開拓して移設、ついでに祖父の遺品や修復された祖父の飛行機、それから戦争の悲惨な状況を記す資料等が保管してある博物館が建ち、麓には駅からずらりと続く商店街が出来ている。
祖母は口癖の様に言っている。「おじいさんにも、この景色を見せてあげたい」と、「おじいさんの守ったこの国は、とても良い国になった」と。
私自身、祖父に会ってみたいとは思っても、それが不可能な事は無論理解していた。
どう頑張っても、生きた祖父には会えないと、もう死んでしまったのだから、どうしようもないと。
――だけどあの日、全てが変わったんだ。