ベルパスパ王国文献 一
火戦暦800年代、国同士の大きな戦争は起こらず、魔王が二百年間現れなかった太平の時代。その時に【錬金術】と呼称される魔法が各国で盛んになった。
後年において魔法や魔術と共に魔導学の一分野として統合されることになる錬金術は、『戦争から平和へ』いうスローガンの元に運動が展開され、国や一部の特権階級が独占していた魔法や魔術が広く国民に開かれた。
それが大きな反響を呼び、国民社会に通用する魔法を錬金術と呼ぶ事が国民の間で流行した。
錬金術と呼ばれ国民に浸透した魔法は、物質に対するアプローチを特に発展させた。
概ね一般国民の間においては、生活に用いる魔法を錬金術と称してしたようであった。
火戦1204年現在の一般公衆に区別する意識はほとんど無くい。
概ねにおいて魔法と呼ばれているのが現状であるが、魔導学における工学分野の専門家を特に【錬金術師】と呼んでいる。
魔法か錬金術かの区別は『刑法』においての要請である。
【現代魔導学史】 ブルエン・トーパ 著
火戦暦1204年の初版より抜粋。
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◎錬金術の行使に関する法律(ベルパスパ王国法)
施行 火戦暦824年
第一条 この法律において錬金術とは、魔力を用いて物を生成、加工、補修をする事をいう。また補助的な器具を用いて行う魔法は錬金術とみなす。
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土魔法を用いて礫を撃つ行為は魔法だが、家屋の補修を行う事は錬金術である。
古来から用いられてきた生活魔法(家事の火起こし、飲用水の生成、風による涼、農耕の土操作等)は錬金術である。
魔法を使って家屋の修理を行っても問題無いが、喧嘩や争いで魔法を使い被害を出せば警吏に逮捕されるのは当然の話である。
この逮捕すべきかどうかという判断を行う為、魔力を用いた行為を線引する為に錬金術という概念が用いられているのである。
魔法の規制を錬金術に該当するものは緩やかにし、魔法の社会活用を促す事がこの『錬金術の行使に関する法律』の目的である。
例えば壁の落書きを掃除する時に使われる水魔法の高圧洗浄は錬金術であり、間違えて壁を壊してもそれは錬金術であり、刑事罰には問われない (意図して壁の破壊を行ったのならば魔法使用の違法行為となり、刑法が適用される場面となる)。
政府関係者や開拓者はこの使い分けに敏感であるが、一般社会ではあまり意識しておらず錬金術という言葉の使い方は適当である。
錬金術は第八回魔王戦争後に新しく出来た定義でる。
復興が行われていた時に流行語となり、今でも一般に好まれて使われている。
【生活の錬金術】 ジャストン・フォッサム 著
火戦暦908年初版より
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◎貴族、市民の財産や身分に関する法的な規律~日本国においての民法との違い~
貴族法と臣民法がそれぞれの身分に応じた総則となり、別に設けられた物権法、債権法が各論を構成し、前者を修正する。
親族法は、貴族法と臣民法の各々に規律されている。
パンデクテン方式と呼ばれる日本の民法と同じような作りになっているが、総則に当たる部分が貴族と臣民(国民)で分かれており、また判例も入り混じってややこしい。
地球の近代的な文化の匂いを感じる一方で、恐ろしく古臭い慣習や考え方も根強く残っているのが不思議である。
いや、これは日本でも同じだったか。
【 】 著者不明
図書館に忘れられた持ち主不明のノートより