四川料理店がオープンしたそうだ ②
このゲームには味覚というものが存在している。
なので現実同様に、美味しいものを堪能することができる。味覚設定はオフにはできない。なのでポーションなどもきちんと味がわかる。
ちなみにポーションはメロンクリームソーダ味。
「くうう! この舌を刺激する辛さ! 有名シェフの料理は美味いなぁ」
麻婆豆腐を一口口に運んでの感想だった。
本格的な麻婆豆腐。唐辛子が入っていたり、肉そぼろとかもあって、小口に刻まれたネギも美味しい。こう、辛いなぁ。
辛い後に食べる甘いものも美味しいんだよこれが。
「魔王軍幹部が平然と食べているとは……」
「スクショ……」
スクショとられたか。掲示板にでもあげるつもりだろう。
いいんじゃない? 魔王軍の舌もうならせるとかPRになるんじゃないの? 私はそんなことは構わず、麻婆豆腐の刺激を味わっていた。
「辛いですっ……! お水っ……!」
「だからやめとけって言ったのに」
レブルも私と同じ奴を頼んでいた。私は激辛麻婆豆腐と頼んだので結構激辛なんだよ。世話が焼けるな。
「もう一品頼みな。私が食べてあげるから」
「す、すいません……。じゃ、じゃあこの杏仁豆腐ってのを……」
腹膨れるのか?
私は麻婆豆腐をすくいながらそう思う。杏仁豆腐で腹が膨れるなんてこと滅多にない。というか私杏仁豆腐嫌いだし。
どうも好きじゃないんだよな。
「舌が痛いです……。喉も痛いですぅ……」
「辛さでやられたか。なら口直しにもちょうどいいんじゃない? 杏仁豆腐。でもそれだけじゃ足りないっしょ」
「どのくらいの量なのかわかりませんので……」
「カップ一杯くらい」
「……その、じゃあこの担々麵ってやつを」
「わかった」
店員を呼び、担々麵と杏仁豆腐を一個注文した。
「それにしても師匠こんな店知ってたのですね」
「まあね」
「それにしても結構人いますね! 人気店なんでしょうか?」
「だねぇ」
と、食べながら窓の外を眺めていると。
なにやら逃げていく姿が見えた。なにがあったのかわからない。逃げてきた方向をみると、大剣を持った男が暴れまわっているのが見えた。PKか。
まぁ私には関係ないけど。
気を取り直して前を向くと……レブルがいなかった。
また窓の外を見ると、レブルは剣をもち、走ってその男の元に向かっていく。腐っても勇者ってわけですか。
しょうがない。
「店員さん。ちょっと離れるけどまだ食べてるから」
「かしこまりました」
私はレブルの後を追うことにした。
レブルは聖剣を構え、男と対峙している。
「今度は嬢ちゃんが相手か?」
「ええ。あなたのような非道な人間、見過ごすわけにはいきません!」
「それ私たちも言えないんだけど……」
私のほうが残虐なことをしていると思う。
「正義感ぶってんのかよ。だっせえ。偽善者とか一番だせえっての」
「ダサくてもいいです。私はかっこつけるために戦うんじゃありません」
うわ勇者してるなぁ。
レブルの眼はとてもまっすぐだった。誰かを助けようとしている。魔王軍としては褒められることじゃないけれど。でも、私としては褒めてやりたい。
悪いことも、いいことも自分に返ってくるものだ。だからこそ、レブルはとても幸運なんだろう。
「私は人が死んでもどうでもいいのです。ですけど……あなたみたいなエゴで殺されるのだけはどうしても許せません!」
「まぁ、そっか」
私は基本的に理由ある殺人だからな。私の目的を達するために殺すということぐらいしか私はやらない。基本的にはだけど。
でも、レブルが相手しているのはただ快楽を得たいだけの理由なき殺人だ。それが許せないんだろう。
「理由なき殺人はどの国でも許されませんよ! そんなの理不尽です!」
「理不尽? 理不尽ごときで文句言うなら……」
「そうだ。レブル。理不尽ごときで文句言うんじゃない」
私は、レブルを諭し、その男に近づいた。
「話が分かるじゃねえか嬢ちゃん。だったら……」
「だから理不尽に死んでいけ」
私はナイフで男の喉元をかっきった。
「なん……!」
「理不尽で死ぬんじゃなくて、死そのものが理不尽なんだよレブル」
男はポリゴンとなって消えていった。
「さて、戻ってご飯の続きを食べよっか」
私たちは店に戻ったのだった。




