即戦力、ゲットだぜ!
ゲームにログインすると、ワグマたちが先にいた。
「レベル上げするわよ!」
と、ワグマがそういうのだった。
まぁ、する予定だししなくちゃいけないからね。必然的に今日はレベル上げの日になると思ってた。そもそもレベルが足りないから魔王というには遠いしな。
私は、弓を手に持つ。
「モンスター相手だと柔道技が通じないのが苦しいが……!」
「そうねぇ、とくにスライムは厳しいわよねぇ」
「なんで君たち柔道技で考えてるの……武器使いなよ」
そういうとワグマは剣、ビャクロは爪を取り出した。
ワグマはオーソドックスな武器だ。ビャクロは近接の武器。相当接近戦がしたいんだろうな。後衛は私だけか。まあまあバランスはいいんじゃないか?
「やっぱりパンドラは弓選んだのね」
「まぁ、近づいて戦うっての柄じゃないし」
「そうね。うしろでちまちまやるのがパンドラよねぇ」
ちまちまでもいいだろう。
「それじゃ、モンスターとの戦いに行きますか!」
私たちは逃げていた。
でかいミノタウロスの魔物が私たちを追ってきている。モォォォォ!と甲高い声を上げながら棘棍棒を振り回してくる。
原因はビャクロだった。最初に会った魔物を倒そうといって、ワグマがそれにのっかった。どうせスライムかなんかだろうと思ってたら、なんかミノタウロスだった。
「ちょっとパンドラ! なんか策はない!?」
「あるわけないでしょ!? ミノタウロスと戦うなんて思ってなかったし!」
それに、落とし穴も何もない森の中。
崖があるなら話は別なんだけど……。そう簡単に近くに崖があったりしないよな。くぅ、レベル差が多分ありすぎるんだよな。鑑定なんて便利魔法ないから憶測にしかないけど。
ただ、あの棍棒当たったら痛そうだよなぁ。巨体だからその分力も強いだろうし一発食らったら瀕死だろうな。
「こういう策を考えるのが上手いのはパンドラだ。頼む」
「頼むわ! そうそう死にたくないもの!」
「あんたらなぁ……。わかったよ」
こういうことなら王国の地図を頭にぶち込んでおくべきだった。
「どっちにする? 倒すか、逃げ切るか」
「あわよくば倒したいわ!」
「経験値にもなるだろうしな」
「わかったよ……」
私は、耳を澄ませる。
周辺に何かないか音で探査している。相変わらず足音がうるさい。
……水の音が聞こえる。しかも結構近くだ。川が近くにあるのか?
「右だ!」
私たちは右に大きく進路変更をした。
急に右に曲がったことで少し猶予ができた。やっぱり車と同様に急には止まれないらしく派手にすっ転んでいる。
そして、右を進んだ少し先にデカい川があった。
「川に突き落としたところで死なないだろうなぁ」
「でも、突き落とすんでしょう?」
「もちろん。川のほんの手前で待機して、ぎりぎりに躱すよ」
「わかったわ! 一発勝負ね」
「合図は……ビャクロ。頼んだ」
「任された」
ミノタウロスはずかずかとこちらに向かって突進してきたのだった。
ビャクロはそれを見ている。そして、ビャクロは口を開き始めた。
「1、2の……」
私は足に力を込める。
「さん!」
ビャクロの声と同時に私は右に避ける。すると、ミノタウロスは止まれなくて川にざぶんと落ちたのだった。モォォォォ! と暴れまわってばしゃばしゃと水しぶきを立てる。私たちに水しぶきが当たる。
結構深いんだなー。と、ミノタウロスはなんだか必死に暴れている。もしかして泳げないのか?
なら、いいか。溺死するのを待つだけでいい。
すると、ミノタウロスはどんどん河口に流されていく。
ミノタウロスはそれに気づき、その先が滝になっていることを理解したのだろうか。絶望したかのような顔でこちらを見てくる。
それは助けてくれと言わんばかりの顔だった。
……しょうがない。
「ウインドボール!」
私は、ウインドボールを何個も作り、ミノタウロスをあちらの河原のほうに押し出していく。足が付くところにいったのか、ミノタウロスは這い上がってきた。
「ちょっとなんで助けるの!?」
「いや、なんとなく」
「なんとなくで……」
私は、ウインドボールを下に作りあちらにまで飛んでいくと、ミノタウロスは頭をぺこりと下げてきた。
「お前、知能あるだろ」
「モォ」
「私はお前がおってくるから川に突き落としたまで。私たちは何もしてないのに追ってくるあんたが悪かった。それはいいな?」
「モォ」
知能がある。ならば話は楽だ。
「なぁ、あんた私のテイムモンスターにならないか?」
「モォ」
ミノタウロスは頭を下げてきた。すると、ミノタウロスは光り始める。
《契約、完了いたしました》
そういうアナウンスが聞こえてきた。
計画通りだ。