アバロン教最高司祭 ①
夜。私は二人を私と一緒の部屋にいれ、ヘッドギアをかぶる。
「師匠。つい先ほどアバロン教最高司祭と名乗られる方がやってまいりました」
と、突然の報告を受ける。
そういえばそんなんあったなーって感じだ。正直宗教とか死ぬほどどうでもよかったし、神様なんて信じていないからだ。
神にもすがりたいほど困ってない。
「それで、どんな用事だった?」
「貴方様が魔王と名乗られる限り、不幸が訪れますとかそんな内容でした」
「へぇ……」
「さらにアバロン教を信仰し、魔王を退けば幸運が訪れるとか」
「悪徳宗教かよ」
魔王にすら教を進めてくるとか頭おかしいんじゃないの?
そもそも、不幸ってものはいいようだ。そら討伐したいやつらがいるんだろうし、不幸なのは当たり前の事なのだ。
信者を増やしたいほど切実なのか? いろいろと黒そうな宗教なのにか?
「ど、どうしましょう。い、今まだ玄関ホールにいるんですけど」
「居座ってるのか……。わかった。私が直接話すよ」
「師匠のお手を煩わせてしまい申し訳ございません!」
レブルが頭を下げたのだった。
玄関ホールのほうにいくと、白いローブをかぶった細身の男性が本を持ち立っていた。
「どうも。魔王軍のパンドラと申しますが。あなたの名前を教えてもらってもよろしいでしょうか?」
「アバロン教最高司祭アヴェール・ニッカと申します」
ぺこりと一礼。
私は、それで、宗教の勧誘ですかと早速話題を切り出した。
「ええ。あなたがたも神に救われるべきなんだと思いやってまいりました」
「へぇ。でも、神に縋るほど困ってないんだよ」
「いえいえ。いつ何時、なにがあるかわかりません。神はそんなことも助けてくれるでしょう」
「そうですか。ですが、一つ疑問が。私たちに宗教を進めるのはなぜでしょう? 教本によれば私たちはいわば人間の劣等種なはずでしょう? 神は劣っているものは助けないのでは?」
「いえ、我々は価値観を見直したのです。どの種族も平等だと見直しました」
大した心がけだ。
というか、一向に引く気配がないな。これは私たちが怒って手を出すのを誘っていると見た。それを理由にしたいだけだろうな。
なんていうか、浅はかというか。
「そうですか。ですが、人間というものは一度植えられた価値観というのはそうそう変わるもんじゃないんですよ。態度では平等と言っても実はと言うと内心は見下しているというのもあるでしょう? それは本当に価値観を見直したといえるのでしょうか」
「そう思う人はうちの教団にはおりません」
「そうですか。ですがそう思う人がいる時点で平等とはいえませんね。それに、もう取り繕いはなしにしましょう? あなたがたの目的はすでにわかってますから」
「……目的、とは?」
「あなた、国を牛耳りたいのでしょう?」
そういうと、少し言葉に詰まる司祭。
図星か。
「魔王という強大な後ろ盾があるということで王を脅し、自分たちが王になる、もしくは王を傀儡にするが目的でしょう? きっと熱烈な信者である魔王様が王を恨んでらっしゃいます、だからこの法をお作りなさい……とか。そういうことを考えてるのではなくて?」
「……あなたには取り繕いも無駄そうですね」
「ええ。だからそんなうすら気味悪い笑顔もやめてくださいね?」




