夏休みはまだ終わらない~パン子編~
私には従姉弟がいる。
叔父さんの妹がいて、その人も結婚しているし、子どもは私と同い年の女の子が一人と5歳の子が一人。今日こっちに来る予定だったらしく、私も聞いた時は久しぶりというか、初めて会う気がする。
「お爺ちゃん! 沖姉さん! きた……よ?」
私が家にいると、女の子と目が合った。
誰だろうと思いながらも、私は二階へあがっていこうとすると、お姉ちゃんが私の首根っこを掴む。それはまるでどこにいくというかのようだった。
いや、私この子にとっては知らない子だし知らない子はフェードアウトしようかなって……。
「よくきたな。あ、こいつ私の妹の眠だ」
「お姉ちゃん痛いんだけど」
「あ、そうなの! はじめまして、春川 海っていいます。弟の悠馬です」
「お姉ちゃんおめめまっくろ!」
「こ、こら」
あはは……。
おめめまっくろてクマのこといってるんだよな。
「ご、ごめんなさい」
「い、いいんだよ……」
と、そこで会話が途切れる。
私もともと話し上手というわけじゃないからなぁ。これ以上何を話せばいいのかわからないし。うーん。気まずい。
「んじゃ、ちょっと散歩行ってくるわ」
「僕もいくー!」
「えっ」
「こ、こら……」
「眠、じゃあついでに花井商店にいってだな……」
「チャリじゃないとダメなところでしょそこ……」
と、海さんがいった。
え、そこチャリじゃないと時間かかるの? 行きたくねぇ……。ついでって距離じゃないだろ。というか、この子を後ろに乗せてけってか? 体力ない私に対する嫌がらせと受け取っても問題ないよな? おい、売られた喧嘩は買うぞこの野郎。
「おし、行ってこい」
「……えぇ」
「はやくいこっ!」
「えぇ……」
お姉ちゃんが外に行き、自転車を出してくる。
後ろに悠馬くんが乗せられ、私がこぐはめになった。お姉ちゃん車の免許持ってんだから車で行けばいいじゃないかよと目で訴えるも知りませんというように目をそらした。
くっ……。
「い、行ってきます……」
「おう。途中でばてるなよ」
「体力ないのわかっていってんだからあとでお姉ちゃん絶対殺すからな……」
私は、自転車のペダルをこぎ始めた。
そして、行くとき、見知った顔が二人いた。
「月乃に白露? なんでこんなとこに」
「いや、会いたくなって」
「なんかしっくりこないのよ」
「えぇ……」
会いたくなってくるか普通。
私はチャリを止めて、少し息を整えた。いや、まじで辛いです。もう帰りたいです。
「お姉ちゃんたちだれー?」
「この子従姉弟なの?」
「うん。その弟らしい」
「ぼくゆうまっていうんだ!」
「偉いね。私は月乃だよ」
「私は白露だ」
「つきのねーちゃんにはくろねーちゃんにねむ!」
「私だけ呼び捨て……」
いや、うん。呼び捨てか。ねーちゃんってつけてほしいんだけどな。一応ねーちゃんだからね私も。ね? それともこんな腹黒ねーちゃんとして認めなくないってか?
「ゆうまくんはどこいくつもりだったの?」
「おつかい! ねむと!」
「あんたぱしられてんの?」
「うっせ」
ぱしられてんだよ。お姉ちゃん言論でというより感情でだから。
とにかく横暴で傍若無人。いい人ではあるけど、無理が通れば道理が引っ込むんじゃなくて無理を通して道理を押し込むって感じ。
だから行ってこいの一点張りなんだよな……。
「なら私が行ってやろうか? 体力には自信がある」
「頼める? 花井商店ってこの道まっすぐいったら左手側にみえるからそこで小麦粉とサラダ油」
「まかされた」
白露が自転車にまたがる。
「私たちここにある神社で休んでおくわ。いってらっしゃい」
「ああ」
私たちは神社の階段をあがっていく。
月乃は悠馬君と手をつなぎ、ゆっくりとあがっていく。私はというと。自転車の疲れが残っていて、二人よりもさらに遅く、一歩一歩めちゃくちゃ遅い。
あぁ、疲れた……。
「あ、そう。パン子にお願いがあるんだけど」
「お、お願い?」
「今夜泊めて?」
「……聞いてみる」
私はポケットから携帯をとりだし、お姉ちゃんに電話をかけた。
友達が泊まりたいっていってるんだけどというと、わかった。いいぞと言ってきた。
「いいって」
「ほんと? ありがとう。手土産としてメロン持ってきてるからみんなで食べましょうね」
と、デカいカバンからメロン三玉を取り出してきた。
「なにがいいのかわかんなくてとりあえず最高級なマスクメロン買ってきたわ。網目も最高品質よ。一玉なんと二万近く!」
「うわたっけえ!」
「ふふ、こんなのやすいもんよ。一応大人数だったら困るから三玉だったの。いい買い物したわ」
「さ、さすが金持ちやでぇ……」
私もお金持ちになりたいです。切実に。




