夏休みはまだ終わらない~白露編~
地面に体が打ち付けられる。
「さすが白露。受け身が完璧だ」
「こんなのどうってことない」
柔道着を着なおし、立ち上がる。
私の夏休みは柔道とゲーム三昧にすると決めたのだ。宿題という大きな壁があるが、それ以外は柔道、ゲームというサイクルで過ごしている。
一日でも練習を怠ると下手になっていくから、毎日練習しなくちゃならない。
「それで父さん。仕事はいいの?」
「今は目立った事件起きてないし部下だけでも解決できる。たまにの真昼間からの娘との語らいなんだ。仕事を思い出させないでくれ」
「といわれても。父さんの仕事姿にはいつも尊敬してるし」
私がそういうと、父は照れたように頭を掻く。
警察官が正義というわけではない。が、正義であろうとする父、今のご時世には珍しいほどまっすぐで正しくあろうとしている父は尊敬できる。
「それじゃ、私ランニングしてくるから」
「ああ。気をつけろよ」
「知ってる」
私は家を飛び出し、足を動かした。
スポーツというのはとても楽しい。体を動かすと幸せな気持ちになれる。体を痛めつけてこそ成長しているという実感を得ることができる。それが私は好きなんだ。
私は、早いペースでランニングし、途中コンビニに寄った。
「ふむ、スポドリ売り切れか。今日こんな暑いから仕方ないか」
水で我慢しようと思ったが、水も売り切れていた。
ふむ、ならばお茶だ。お茶は正直熱中症になりやすい。尿意を催しやすく、脱水症状になりやすいと聞く。だからこういう時はお茶をあまり飲みたくないんだが……。
この猛暑の中スポドリも水も売り切れているんだから仕方ないだろう。今日は早めに切り上げるとしようか。
会計を済ませて、また走り出す。
太陽がさんさんと降り注ぎ、アスファルトに跳ね返る。本格的な夏の猛暑が私を蝕んでいく。今の私が考えていることは友人二人が何をしているかだ。
ゲームでは頻繁に会っているけど、夏休みだとそんな会えない。それに、パン子は田舎のお爺ちゃん家に行っているし、月乃はどうしてるかわからない。
夏休みこそ、外で二人と遊びたいもんだ。
「案外私も友達に弱いものだな……」
柔道さえできればいいという考えだった。
でも、パン子と友達になって、パン子たちのためになにかしたい、一緒にいたいという気持ちが湧いた。友達ができたと父に告げると、大層驚いていた。
まぁ、友達という友達は私にはいなかったからな。
「パン子も頑張ってるんだろう。私も頑張ろう。夏休みはまだまだ続くんだ」
やりたいことも、全部やっていきたい。
夏休みはまだ終わらない――




