アナログゲーム対戦
とりあえずログアウトして晩御飯を食べに行くことにした。
ふわああとあくびをしながら階段をゆっくり降りていると、頭に何か堅いものが当たった。というか、角だったのでものすごく痛い。
「なんだよったく……。なにこれ。カード?」
「ふふ、倉庫にしまってあったのよ。そのカード。たまにはデジタルゲームじゃなくてアナログゲームをやりましょ?」
「……それもいいね」
アナログゲームか。
カードゲームとかこういうの、私大の得意なんですけど?
ルールを教えてもらって、おじいちゃんたちの前で対決することにした。
「これ、わしらもやったのぅ。日本全国が熱狂していたわい」
「そうですねぇ。おじいちゃん、とても強かったのよぉ」
私は、カードを繰り出した。
すると、お姉ちゃんは背後にカードを投げ出す。
「だー! お爺ちゃんに鍛えられていたはずなのに! なんで先を読んでくるの!?」
「だからこういう頭脳戦は私大の得意なんだって」
「陰険な妹! 手加減しなさいよ!」
「えぇ…始まる前は『いくら姉妹といえど手加減はなしよ! 本気で行くわね!』って言ってたよね?」
「それはそれ、これはこれ」
「横暴が過ぎるぜ…」
でも、結構こういうゲームも悪くない。
私は手持ちを見て、うーんと唸る。正直引きがよくないので適当にやりくりしていたんだよ。というか、デッキ確認してもそれほど強い効果の奴はなかった。
不正よくないよ。でも勝ってるけど。
「そもそも、お姉ちゃん。めちゃくちゃ弱いデッキ渡してきたでしょ」
「……それもバレてるし」
「不正した挙句に負けるって……」
「うるさい! 今度は将棋よ! 将棋も私強いわよ!」
「だから頭脳戦で私に挑むなって……」
将棋盤を取り出し、駒を並べる。
「眠は飛車角落ちね」
「はいはい」
「その飛車角は私が使わせてもらうわ。そして歩も五枚抜くわよ」
「ええ、それはさすがにやりすぎじゃない?」
「うるさいうるさいうるさい! こうでもしなきゃ私勝てないじゃない!」
「えぇ……」
横暴が過ぎるぜ。
でもまぁ、世の中の凄い人は王だけで勝てているし、それほど問題はない。ただお姉ちゃんの腕前がわからないからなぁ。
将棋はたまに好きで携帯のアプリで指してるし強いほうだとは思ってるけど。さすがに私プロ棋士には勝てないからなぁ。たぶん。
「じゃあ、始めるわよ。先手私ね」
お姉ちゃんがどんどんと駒を動かしていく。
私も、いろいろと考えつつも駒を動かす。なんとお姉ちゃんは私に持ち時間10分をつけた。大会かよ。いや、まぁ、考える時間を無くしたいんだろうけど。
ハンデがありすぎるんだよなぁ。飛車角落ちだけならまだしも歩が五枚もないし。いや、五枚落ちとかとはルール違うし自己ルールなんだろうけど……。歩がないってのがきつい。
「ってお姉ちゃん? 早速ルール違反犯してるんですけど」
「え、どこ?」
「二歩。はい、負け」
「これなし!」
えぇ……とりやがった。
そして、勝負は進んでいく。勝者はというと。
「なんでハンデもらっても負けるのよッ……」
「お姉ちゃんの性格を読んでどういう風に動かすかをなんとなく予想していたんだよ」
「ラプラスの悪魔!? あなた悪魔ね!?」
「人聞き悪いなぁ。ラプラスの悪魔みたいな未来予知できないって。私はあくまで予想だよ。全部予知してるわけじゃない」
「それにしても随分と強いのね。沖ここらへんのジジババの中では負けなしなのよ?」
まぁ、強いには強かったか。
ボードゲーム、カードゲームなどの頭脳を使う遊びはほとんど得意だ。パズルも案外得意。ただゲームはゲームでも恋愛ゲームだけはあまり得意じゃないんだよな……。
「あなた本当に賢くなったわね……。ちなみに聞くけどテストとかいつも何点?」
「オール百」
「……嘘?」
「ほんと」
体育以外なら基本できるし、高校の範囲はすでに終わっているのであまり大丈夫。授業ではほとんど復習っていう気持ちで受けてるしな。
「正直言って怖いわよ……。妹じゃなかったら近づきたくないわ……。心読まれてそうで怖い」
「実際は読んでないけどね」
「読んでるに等しいわよ!」
「そうか?」
「もう! ご飯支度してくる!」
と、お姉ちゃんが台所に向かっていったのだった。
パン子ちゃんに将棋とかオセロとかチェスとか囲碁とかさせちゃだめだって……




