やりたいことは
魔王城につくと、城の前で勇者が待っていた。
「お父さん! お母さん!」
感動の両親の再会か。
別に感動はしないけど。なんていうか、まぁ、こうなるだろうなとは思っていた。お涙頂戴の劇では私泣けないんだよな。
「魔王様! パンドラ様! ビャクロ様! ありがとうございます!」
「いいけど、住処どうする? 森の中に立てるとしても建てるまで時間かかるでしょ」
うちの魔王城は一夜で完成していたけど。
「えっと…よ、用心棒でも何でもしますのでしばらくお城に住まわせてください……」
「だってよ」
「別にいいわよ。私たち全部の部屋使えるわけないでしょ。持て余している客室とかたくさんあるわよ?」
言われてみればそうなんだよな。
三階より上は私は数えるほどしかいったことないし、客室とか洗濯場とかそういう感じになっている。あとは私たちの部屋ぐらいだろうか。
ビャクロとかは結構利用しているんだと思うけど私は大体書庫にいることが基本だし、使わない。
「とりあえず勇者住むってこと賢者に伝えようか。そして、今更聞くけど名前聞かせてくれる?」
「あっ、私レブルっていいます!」
「レブルちゃん。いつもやることとかある?」
「え、えっと、王国からは素振千回以上、走り込み三時間以上やるようにと言われてるので……それさえできれば……」
「王国のことは忘れなさい」
ここは王国じゃないんだからそういうことをする必要はありません。
でもこういう風な習慣がついたからなかなか抜けないんだろうな。両親も可哀想な目を向けている。そんな中やりたいことを必死に考えているレブル。
そんなに悩まなくても……。
「ないならこれから見つけていきなよ。やりたいことができたらなるべくサポートはしてあげる」
「パンドラ珍しく気にかけてるわね。どういう風の吹きまわし?」
「別に私優しさもあるし……」
人を想う優しさは私にだってあるさ。
私は敵だと認定、敵かどうか怪しいというならばそれほど容赦はしないけど、でも、敵じゃないというのなら私は優しくなれると思う。
尽くすタイプですから。案外ね?
「ありがとうございます! 師匠!」
と、レブルは私に頭を下げてきた。
「師匠?」
「やりたいこと見つけました! わ、私は貴方のように気高く、そして仲間に優しい勇者になりたいです!」
「えぇ……」
魔王軍の元で学ぶ勇者っておいおい。
きらきらとした目を向けられる。やめろ。そんな目で見るな。というか師匠って呼ぶな。これ以上あだ名を増やすな! ただでさえパンダみたいだからパン子、死神、ノストラダムスとか言われてるのにこれ以上増やさないで欲しい。
「だってさ、師匠?」
「やめろ!」
「師匠! 今日から師匠と共に行動をいたします! 近くで学び、そして強くなろうと!」
「それはそれで困るぜ……」
どうしよう。困ったことになった。




