魔王はいい人?
王様に明日デモクラットが各ギルドを襲撃しますというと、密告感謝しようと言われた。どうやらデモクラットの一員だと思われたようだ。
王はすぐに兵を動かした。屈強な輩が多いので冒険者では太刀打ちできないかもと言っったからだ。
やること終わり。明日を待つのみ。
明日の昼。
王は兵を動かし、城の警備が少し手薄になっていた。私は忍び込み、王城の地下牢に向かう。男女が体育座りで壁にもたれかかっていた。
私はくすねてきた鍵で牢を開ける。
「あなたが勇者の両親ですね?」
「そうですけどあなたは……?」
「私? 魔王軍のパンドラです。あなたを助けに来ました」
私はにやりと笑って手を差し伸べた。
両親は私の手を取り、そして地下牢から抜け出す。王は自ら先陣を切ってデモクラットの捕縛に向かっているそうだ。
きっとデモクラットは私を恨んでいるんだろうな。話が違うって。そういってるんじゃないかなぁ。そう考えると……やっぱり絶望だね。
利用させてもらっただけだよ。ここを手薄にするためにね? でも、違うとこに注目が行くのは本当だよ? だって勇者の両親が消えたんだもの。
「さて、魔王領に向かおうか」
私は口笛を吹く。すると、上空からフォレトスが降りてきた。
「ドラゴン!?」
「さ、乗った乗った。魔王城で愛する娘が待っているぞ~」
私は両親をフォレトスの背に乗せて、魔王城に戻ることにした。
……あ、タケミカヅチから貰った腕装備結局使ってねえや。
☆ ★ ☆ ★
俺の目の前では縄に縛られた人たちが転がされている。
「くそ! どうしてばれたんだ! さてはあの魔王軍がちくりやがったのか!? 話が違えじゃねえかよ!」
「魔王軍?」
それに疑問を覚えていると、兵士たちが魔王軍とはどういうことだと聞くので、その捕らえられている男は咆える。
「魔王軍幹部のパンドーラ、アレク、ワクマロ、ビャクってやつらだよ! あいつらがバックアップとってくれるっていうから襲撃したんだ! あいつら裏切りやがって!」
「魔王軍と共謀していたのか……。重罪だぞそれも。その幹部たちは魔王様の行動で動いていたのか?」
「独断つってたわ! 魔王様はきっとこういうことする人じゃねえと思うがなぁ!」
「魔王を倒す理由にはならないか……。いや、魔王の手先がこんなことしたからってことで倒す理由に……。いや、だめだ。魔王を敵に回したら…」
兵士はそうつぶやく。
すると、王がそこにやってきた。
「そうだな。魔王を敵に回すのは得策じゃない。むしろ、ワシはあいつらの策にのっかってやったんだ」
と、王がそういった。
「王?」
「あいつらの目的は城の警備を手薄にすることじゃろう。だからあんたらを扇動し、ワシに捕縛するように密告した。頭キレるのぅ」
「あの、王。それに何の意味が?」
「城に捕らえられている人、わかるか?」
「えっと、重罪を犯した犯罪者だと聞いておりますが」
「いや、彼らは犯罪者なんかじゃないわい。むしろ、犯罪者とは程遠い人じゃ」
そうなんだろうか。
でも、それって現代日本では考えられないな。犯罪者とは程遠い人が逮捕されるって……まさかの誤認逮捕? それって大問題じゃ……。
「ワシの息子が魔王を討伐しようと躍起になっておってなぁ。勇者の血を見つけてきてその両親を人質にして無理やり向かわせたのじゃよ」
「……まさか」
「その勇者の御両親じゃ。きっと魔王軍はそいつらを助けに来たんじゃろうなぁ。でも、城は警備が厚いじゃろう? 無理じゃろう? だから警備を手薄にするために密告した。そういうことじゃろうて」
「……いいのですか? なら、現在進行形で侵入されてるわけじゃ」
「いいんじゃよ。あの両親を助けてくれるんじゃから見過ごすわい。もともと、ワシは解放する予定じゃった。ワシの愚息が外堀を埋めまくって解放するにもできんかった。こう、奪われる形しかないんじゃよ。魔王軍はいい奴らの集まりだとワシは思う。友好的に接したらこちらにも利がある。悪い話じゃあないわい」
よくわからん。けど、奪われてほしかったということは確かか。
「その点ではあんたらに感謝するわい。ワシの権限で処刑は免れさせてやろう。そもそも、犯罪を犯すきっかけはこの国の不満点じゃろ? あんたらを殺すのは惜しい」
「……ちっ」
捕らえられていた男は抵抗を辞めた。
王子が主犯でした。
王は何もできず捕らえられていた親を見てるだけしかできなくて。いつか解放してやりたいと思いながらも日々執務に追われていたんですよ。
だからこそ、デモクラットの一員だと一目で気づいた(勘違い)したうえでそれを容認していました。
パンドラは勘違いしてると気付きましたが。で、デモクラットの話を聞いて魔王軍だと気付いたんですね。




