救いの手を差し伸べる
翌日。
昨日はさぼっていた人たちもみんな学校に登校してきていた。さすがにさぼったのはまずかったのか、担任の先生が来た時の第一声が怒りの声だった。
そりゃね。学生の本文は学業だし、学校に有給とかないし。さぼるのはいけないよ。
「……昨日学級閉鎖にはならなかったんですかね?」
「みんな風邪とかならまだしも、お前ら仮病だってことが見え見えなんだよ。だから授業を進めてやったんだ。ちなみに昨日結構進めたからな。知ってるのは夢野、阿久津、球磨川だけだ」
まぁ、昨日は私たちぐらいしか登校してなかった。先生もみんな仮病だってことがわかっていたのか嫌味のようにものすごく範囲を進めた。
私はらくらくついていけたけど月乃とかは必死だったし白露はぽかんとしてたし。でも、勉強ってやっぱ楽しーわ。(スタディーズハイ)
「言っとくけど私はノートとか見せないからね? さぼる方が悪い」
「私も見せないわよ」
「私は見せるようなものじゃないぞ」
と聞いた瞬間にみんな少し顔を青ざめていた。
結構な範囲をすすめた。もちろんテストにもそこはでるわけで。そこがわからないとなるとテストの点数がやばくなることは必然的だ。
「ただ、どうしてもというならそうだなぁ……。キャンディで手を打とう。ミルクキャンディでいいよ」
「俺買ってきます」
一人の男子が走って買いに行った。
「まだホームルーム中なんだが……。まぁいい。特に連絡事項もないしな。もうお前らさぼるなよ。先生だって本当はさぼりたかったんだぞ」
「先生。昨日嫌っていうほど進めてたのってもしかして」
「さぁ、朝のホームルームは終わりだ!」
うわ、誤魔化しやがった! 絶対私怨で進めてたろ! 先生のくせに! いいのかそれで!
昨日買いに行った奴らが羨ましくてあいつらが後悔するためにめちゃくちゃ範囲進めてたんだな!? うっわぁ、先生……。
「しょうがない。帰りコンビニでコピーしてあげるから欲しい人がいたらついてこい」
さすがに先生の私怨で絶望させるのはどうかと思ったので私はコピーさせてあげることにした。
そして、帰りにコンビニは生徒たちであふれかえっていた。
30人近くの人がコピー機の前でたむろっている。私は一枚一枚ノートをコピーしていた。もちろんみんな悪いということで200円ぐらい徴収し、懐が少し潤っている。
で、コピー代を出すって言ったのはなんとクラスのイケメンで、学校の王子様の一人と言われている武宮 甲地。
お金出すよって言った瞬間ときめいたね。かっけえなって。さすがだ。
「でもパン子さんのノートのまとめ方って綺麗だよね。すごいわかりやすくまとめてるっていうか」
武宮くんが褒めてきた。
「まぁ、復習するために見返したりするからね。復習するのにわからなかったら意味ないじゃん?」
「さすがだね」
「もうこのノートだけで乗り切れるような気もしなくない」
「すごいわかりやすい!パン子さんのノートすごいね!」
結構好評なようだ。
まぁ、ノートにただ黒板に書いてあることをつらつらと書いてるだけじゃあれだし大事なところは色ペンとか使い分けてるし。
この方法は月乃たちにも教えたけど月乃はごっちゃになるって言って普通に書くだけになったし白露はそもそも字が汚いから読みづらい。まぁ、白露は運動神経に全振りしたかのようなもんだしな。
そして、全員分のコピーが終わった。
「ありがとね! パン子さん!」
みんな笑顔で帰っていった。
甲地くんだけは残ったけれど。
「君は、結構優しいね」
「そう?」
「俺たちがさぼったのが悪いのに手を差し伸べてくれるのは優しいよ」
「そうかもね。まぁ、私としては武宮くんがさぼったのが意外だったけど。さぼるキャラじゃないでしょ。ゲームで」
「うん。まぁ、俺もやりたかったからね」
「へえ。で、買えたの?」
「残念ながら後ろの子供に譲った」
「イケメンかよ」
買えなかったというわけだ。
「君はやりたいと思わなかったのかい?」
「やってるよ?」
「……え? 昨日買いに行ってなかったのに!?」
驚いたような顔をしていた。
私はにししと笑ってやる。
「持つべきものは金持ちの友人だよね」
「……うっわぁ、優しいって言葉訂正していいか?」
「どちらにせよ、金がなかったから月乃がプレゼントしてくれなかったらやってないよ。無理だってあきらめてたしね」
「そ、そうか」
月乃のおかげでゲームできるから感謝だな。
「じゃ、私帰るわ。気をつけてな」
「うん。また学校で」
私は武宮くんに手を振った。
「やっぱ可愛いなぁ……」
と、その声は聞こえなかったけれど。