ちょっとドキドキする
私が怒られたのは初めてかもしれない。
私は自分の部屋のベッドで寝そべりつつそう考えていた。親も、先生も、周りも。私を叱った事なんて一度もなかった。
私ならしょうがないだろう、と、そういう風に思われていたのかもしれない。怒られるような行為はしているが、私のために怒られたのは初めてだ。
「…武宮 甲地ねぇ」
あの顔を思い出すたびに少し高揚するのはなぜだろう。自分のために叱ってくれた人だからだろうか。少し会いたいと思ってしまうのはなんでだろうな。
ま、どうでもいいか。今日は疲れた。警察からも事情聴取されて…。笑ってたけど。誘拐されて一日足らずで解決って結構速いらしい。なんで人質が抵抗してるんだよと笑ってた。
そして、あの犯人たちからは怪物、と恐れられたようだ。
怪物、怪物ねぇ。
私に人の心があるかどうかなんて知らないが怪物はそうなんじゃないかと思う。私って結構恨み買いやすいタイプだしどこの誰から恨まれてるかは知らない。それをわかってるからこそ殺されるのも仕方ないとは思ってる。
私も私でどこか頭のねじが外れてるんだろうなーって思いつつ目を閉じた。
さきほどから降ってきた雨の音がうるさかった。
翌日、普通に登校していると偶然甲地に出会う。
「よ、よぉ」
「ぱ、パン子、さん」
なんだか顔を合わせるとちょっと恥ずかしい。
「昨日はごめんね。心配かけて」
「き、気にしないでいいよ。俺の方こそビンタしてごめん。痛くない?」
「もう大丈夫! じゃ、じゃあ私は行くね!」
なんだか甲地の顔見てるだけでちょっと恥ずかしくなってくる。
私は柄でもなく、走って登校したが、走り出した瞬間、何かの出っ張りに足をかけ、そのまま顔面から地面にダイブしてしまう。
ずざざーっと鼻を擦り、超痛い。
「だ、大丈夫!?」
「し、死に急いでるのは自分の運もあるかも…」
「そ、そうみたいだね…。俺も運ばかりはどうにもできないからね…ほら、手」
と、甲地が手を差し出してくる。
私はなんだか知らないが心臓の鼓動が早くなった気がした。立ち上がると、私は足に激痛が走る。どうやら膝もすりむいたようで生足だったがためにものすごいグロイ傷ができていた。
そしてどうやら足もひねったようで上手く立てない。
「甲地、先行ってていいよ」
「置いていけるわけないでしょ。ほら、乗りなよ」
「重いよ? かなりヘビーだよ?」
「女子一人ぐらい大丈夫さ。男だから、俺」
と、甲地がかっこよく見えた。
何このイケメン。いや、顔もイケメンで性格もイケメンとかムカつくわぁー。顔がいい奴は性格がクソだって昔から決まってんのに。
とはいえ、この傷じゃ歩いていくのもなんだかきつい。
なんだかちょっとこっ恥ずかしいが甲地におぶってもらうことにした。
私の太ももに甲地の手が来る。
「…柔らかい」
「……女子だからね」
甲地は私を負ぶって学校に向かうのだった。
おぶられて嬉しいという感情は、あった。けど、この私が誰かの足かせになってしまうこともちょっと許せない。けど、やっぱおぶられてうれしい。
私も成長したってことかな。変わったっていうことかな。




