夏休みの終わりの疑問
日も着々と過ぎていく。夏休み最終日になった。
私たちは別荘から帰り、夜家でゲームをしており、私は魔王城の書庫で本を読んでいた。というのも、レオンがやってきたかと思うと危険そうだから預かっておいてくれた頼まれた本。私は興味本位で読んでいた。
書物の名前は転生の書…という怪しさ満々のやつ。アバターでも変えれるのかな?と思ったらそれもなんか違う。
書いてある内容は
・自分と血のつながっている純血の人間でなくてはならない
・生まれてすぐ記憶を取り戻すというわけでなく15年経たねば記憶は戻らない。
・死ぬ際にこの本が近くになければならない。
未来に記憶を引き継ぐための書…。怪しい。
「なんなんだこれは…。いかにもって感じのやつだ」
これがなんなのかはわからないが…。
すると、書庫の方の扉が開かれた気がした。声が聞こえる。声の主はライアだ。ライアが私の名前を呼んでいる。
「パンドラさーん!」
「はいはい、いますよっと…」
「ワグマさんからの伝言で海岸に集合、だそうです!」
「海岸にィ?」
なんだろう。
「最大限の武装をしてきて、だそうです」
最大限の武装?
一体なんなんだ。私はとりあえずライアに連れて行かれ海岸線までいくと、ワグマはすでに大剣を構えている。
「なんなんだよ…」
「強大な敵が来るんです! 海の中から!」
「海の中から…?」
海の中の強大な敵…。海竜、だろうか。
いや、それはないだろう。なんとなくだけど。でも強大な敵?
心当たりはなくは無い。あの前にイルマーが発見した出たり消えたりする敵…。あれは封印されていたってことを示すのだとすると封印されるほど強大な敵ということだ。
つまりあの建物の中に封印されていたもの…。それがなんらかの理由で解き放たれたのだろう。
私は海の方を眺める。
「来ます!」
と、海の水面に揺れが走る。
そして、水の中から出てきたのは男の人だった。禍々しいオーラを放ち、こちらを睨んでくる。
私は一歩前に出る。
「誰だ?」
「……」
男は喋らない。
すると、男は一瞬で距離をつめ、私に抱きついてくる。
「…飯をくれ」
「えぇ…」
男は私に全体重をかけてきたのだった。
「どうする?」
「とりあえず敵意はなさそうね。魔王城に運びましょうか」
私はビャクロに男を抱えさせ、魔王城に戻った。
男は用意した料理を平らげていく。
「久しぶりに物を食べたぜ! 長い間封印されてたからすげえ体力が落ちてる! ありがとな! えっと…」
「私はワグマよ。こっちがビャクロでこっちがパンドラ」
「どうも」
「……」
私は目の前の男について考える。
招待が気になるがその頭のツノは紛れもなく魔族の証だ。
魔族でこの禍々しさは…。
「…もしかして魔王?」
「お? 俺を知ってるのか! いかにも! 魔王ヴェルサス様だ!」
と、沈黙が流れる。
そして、ワグマたちは驚きの声を上げた。
「わ、私も魔王よ?」
「同類か! ほぉぉ、魔王が二人…?」
「ヴェルサスさん。なぜあなたは海底に封印されていたのですか?」
「あ? あー、勇者に負けちまってよ。魔族の誇りを賭けて戦って負けて封印だよ。ったく、仲間どもには面目ねえ…」
と、頭をかいていた。
「今の魔王領はどうなってんだ?」
「え? あー、ニホン国の領地を貰ってる感じなんですが」
「ニホン国ぅ? なんだそりゃあ」
ん?
なんか違和感がある。この違和感の正体はすぐにわかったが…。
なんでだろう。なんか私はどこかで勘違いをしているな。
「…失礼ですがあなたを先代として呼ばせてもらいますがよろしいですか?」
「構わんぞ! 今の魔王はワグマだからなぁ!」
「ありがとうございます。では、先代にちょっと質問を…。人魚は存在しますか?」
「ん? あー、しねえだろ。俺も見たことねえぜ? そもそも人魚ってなんだ? 人が魚になってんのかぁ?」
…なるほどな。人魚は知らない。
「先代の前の魔王は存在しましたか?」
「あ? 俺が最初だぜ。原点の魔王だ」
「…ありがとうございます」
疑問ができた。
大事な疑問だ。人魚の国を襲ったのは本当にこの魔王なのか?ということだ。
「パンドラ。なんか気になることでも?」
「いや、いい。ちょっと考える」
うーん、なら人魚の本当の敵って誰だったんだろーな。
人魚の本当の敵もわからないしあの海に沈んだものはなんだったんだろう。
「先代さん、あの先代さんが封印されていた建物ってなんですか?」
「あー、あれか? あれは俺の城だったもんだ。勇者も完全に封印するために魔王城ごと海に落としやがったんだよ。ひでえ話だよな」
なるほどな。あの建物は元魔王城…。大陸ごと海に沈められたんだ…。
でもこうして話を聞いていてもまだまだ疑問は尽きない。
次の章が多分最終章です。




