一度本島に帰還
カイハの修理が終わり、ご飯の時間になったのでダイニングに向かうと白露しかいなかった。
「あれ? 月乃は?」
「さぁ。私以外来てないぞ」
おかしい。時間にルーズな私ならともかく月乃が遅れるなんて…。
私たちは月乃の部屋に行くとなにやら電話していた。
「父さん海外なの!? 今から私に行けってそりゃないわよ! ああ、ちょ、せっかく羽伸ばしてたのに!」
「なんか怒ってるね」
「そうだな」
月乃は電話相手にキレていた。
そして、一方的に電話が切られたのか、月乃はスマホをベッドにぶん投げた。
「なんでこんな青二才のクソガキに行けっていうのよ! あーもう!」
「やあやあ、月乃さん。お土産よろしく」
「あんたも行く前提で言うな!」
と、私の顔面に枕をぶん投げられた。
月乃の枕は綿とか羽毛ではなくソバ殻枕。地味に痛い。
「うぅ…今からとなると徹夜決定じゃない…」
「だそうだぞパン子」
「なんで私に言う?」
「なんとかしてくれるんじゃないかと」
「こればかりは…。私もついてってやるから行こうぜ月乃」
私がそう言うと月乃が笑顔になった。
「よし、言ったわね! 白露は!?」
「遠慮する。私はどうせ役に立たないだろうからな」
「いいからお前も来い」
「やだ! 私はゲームをするのだ!」
「ワガママ言うな」
と、私たち三人一度本島に戻ることになった。
本島に着いたのは午前3時。こっから私たちの街まで1時間くらい。
月乃と白露は車の中でぐっすり眠っており、私は月乃から借りた携帯でニュースを見ていた。月乃は経済の新聞などを契約してるらしく、私は暇つぶしに読んでいる。
「ま、世の中不景気っすなー…」
それにしても月乃の用事とは一体なんなんだろう。
「城ヶ崎さんも大変ですねぇ」
「あはは。まあ、自分が望んだことですから」
「仕事熱心…。たまには逆らってもいいんすよ? こいつは」
「いいんです。お金をもらってる以上見合った働きをしませんといけないので」
こんな深夜だと言うのに…。
ま、私が口出しすることでもないんだけどよ。私はスマホをいじっている。
「それにしても月乃の用事とは?」
「阿久津家が支援している会社で問題が起きたらしくて阿久津家の指示を待っているということらしいです。それでお父様から視察してこい、と言うことだそうです」
「社長令嬢も大変なこって…」
そういうけど同情をするわけでもない。金持ちに生まれたんなら金持ちの生き方がある。
私と月乃、白露は本来は関わることがなかった運命だったかも…。いや、運命とか話していても仕方がないか。
「前々から気になっていたんですが夢野さん。夢野さんたちはいつも一緒で姉妹みたいですよね。本当に血の繋がりがないのか?っていうくらい…」
「…え? この仲良し関係っておかしいですか?」
「おかしくはありませんが…。友人という距離感でもないと思ってますよ」
そ、そうなんだ。たしかに結構仲良くしてるしこれが普通だと思ってたけどこの仲良しさは異常なのか…。
ま、まぁ今更聞いてもこの距離感は変えられないけど…。
「お嬢様が車の中で眠るのはあなたたちの隣だけですよ。いつも移動の時は眠らずに起きてます」
「へぇ…」
「あなたたちが隣にいるからこそ安心してるのでしょうね」
月乃は幸せそうな顔を浮かべて寝ている。私はこういう話聞かされてこっぱずかしい。
なんか、ムカつく。私はとりあえず月乃の鼻の穴に指を突っ込みブサイクな顔にしてやった。私はパシャリと写真を撮る。月乃は苦しそうに咳をする。
「あひゃひゃ! 次白露!」
白露の鼻の穴に指を突っ込み、ブサイクな顔にしてから写真を撮る。
白露は寝苦しそうに顔をしかめた。私は腹を抱えて大笑い。全員見た目はかわいーからこんなブサイクになるって面白い。
「あの、夢野さん。訂正します。あんたはただのいじめっ子です」
「いいじゃないですか。二人は寝てるし少しくらいのイタズラ…」
「…起きてるわよ?」
「今ので目が覚めた」
と二人が目を覚ましていた。
二人は私に怒りの目を向けてる。あ、これやばいやつですね。
「パン子」
と、私を呼ぶ月乃は片手でチョキを作っている。白露は私をガッチリ固め、月乃が私の鼻の穴に指を突っ込んできた。
や、やめろ! 私をブサイクにすんな!
月乃は私の手から携帯を奪いカメラで撮った。
「うぅ…お嫁に行けない…」
「うわ、パン子ぶっさいくな顔ねえ! あはははは!」
「月乃もすごい顔!」
「白露は白目向いてたからな」
車内で私たちはものすごく騒いだ。




