海底都市マールダウン ③
アルファリアさんについていき広場についた。広場は人だかりができている。
「人魚と言えばなんだと思う?」
と、隣に泳ぐアルファリアさんが訊ねてきた。人魚といえば、か。
「唄?」
「そう、唄だ。もう少しで人魚アイドルの路上ライブが始まる。人魚はみんな唄がうまいんだ。だが、群を抜いて上手いという人魚がアイドルになれる」
へぇ。アイドルか。
歌って踊るのかな? 私自身アイドルには超疎い。AKBだのBKBだのあまり興味が沸いていない。知識としてはもちろん頭に叩き込んでいるけど…。私が曲としてよく聞くのは洋楽の方が多いかな。かっこいい曲ばかりだし。
「アルファリアさんもアイドルが好きなの?」
「人魚にとって唄は最大の娯楽であり武器だ。私も唄を歌うしよく聞いたりもする」
「武器?」
「人魚の唄声は精神によく作用する。怒っていても落ち着くんだ」
鎮静作用があるのか…。安らぐっていうことだろう。どちらかというと子守唄みたいな感じなのだろうか。
でも、鎮静作用ならまあいいんじゃないだろうか。よく伝承なんかであるのは混乱作用があって船を沈没させたりなど海の魔物として扱われることもある。
「さて、そろそろ時間だ」
と、いうと、音響の音が聞こえてくる。
マイクを手にした人魚が広場に泳いできていた。服は貝殻のビキニ。なるほど、典型的な人魚ファッション。
『みんな~! 今日はまりのライブに来てくれてありがと~!』
マイクを通じて声が流れる。
まりっていうのか。可愛らしい声をしている。
『今日も張り切っていってみよ~!』
と、どこからか音楽が流れる。ゆったりとした曲調。アイドルの曲というよりかはバラードに近いような感じのリズムだ。
アイドルがバラードを?
「私のイチオシアイドルのまりだ。歌声が一番好みだ」
と、小声で教えてくれたのだった。
アイドルの唄が終わり、ライブが解散された。
私たちは移動しようとしたところで、後ろから声をかけられる。
「あのー」
「ん? なん…まり!」
と、さっきのアイドルであるまりさんが声をかけてきた。もじもじとして、何やら恥ずかしそうにしている。
何してんだろうと思っていると、何やら手紙を差し出してきた。
「ずっとファンでした! アルファリア様! どうか私のファンレターを受け取ってください!」
「…ありがとう」
アルファリアさんが恥ずかしそうに受け取っていた。実際に恥ずかしいのだろうが…。自分が推していたアイドルからファンレターって…。お互い愛しあってるのなぁ。
そう思いながら優しい目でみていた。
「この国を守ってくれていること、とても誇りに思っていますし、強さに尊敬もしております! あなたがいるから私は歌えます!」
「な、なに。この国を守るのは当然のことだ」
照れている。可愛いな。
私がくすくす笑っていると、こちらに視線を向けられる。
「こちらの方は誰でしょう? 人魚ではない…人間!? 人間さんですか!?」
「あ、ああ。種族は…人間ではないが人間みたいなものだ」
「ああ、私、一度人間に会ってみたかったんです! あわよくばこの国の外に出てみたいっていう…」
「じゃ、帰るとき一緒に来てみる?」
「いいのですか!?」
「いいよいいよ。興味あるんでしょ?」
行きたいです! と元気よく言っていた。
「…あの、パンドラ様。私もいいか?」
「アルファリアも?」
「地上は恐ろしいところだと聞いている。が、小さいころから興味はあったのだ…」
「なるほど。いいよ。じゃ、早速いこっか。という前に…。これらの素材ってある? 私それを調達しに来ただけなんだけど」
「あ、ああ。売っているぞ。鉱物屋にいけばある」
「鉱物屋?」
「珍しいのか? 海の中の石でも全部宝石なんだ。それぞれ価値がある」
なるほど。なるほどなぁ。
「でも人魚の国のお金なんて…」
「私が出しますよ! ライブでもらったお金はたくさんありますから! 地上に行く通行料だって思えば!」
「ほんと? 悪いね」
私たちは鉱物屋に向かっていった。
そして、必要な材料をたくさん購入し、いよいよ地上に向かうことになったのだった。




