姉のコンプレックス ①
私のダンジョンに戻ると、少しして玉座の間の扉が開かれた。
「王! 勝負だコラァ!」
と、タツヲミさんとお姉ちゃんがやってきたのだった。
私は思い切り顔を合わせる。お姉ちゃんが嘘…という顔をしているし、タツヲミさんに至ってはわけがわかってないようだ。
「ちょ、ね、眠? なんでここにっ…」
「パンドラね。うーん、なんでだろうね?」
「そっか! 妹さんも王に挑みにきたんすね!」
なぜそういう解釈をする? この場には私しかいないだろう。
「タツヲミ。違う。パンドラが王だ」
「なっ…」
お姉ちゃんは早速戦闘態勢をとっていた。私はお姉ちゃんよりも早くやってるしレベル差も結構ある。私の方が断然有利だ。
負ける気は不思議としない。だがしかし二体一か。それはそれで嫌なんだよな。
「タツヲミさん。本当に私と戦うの?」
「王だってわかりゃあ…」
「でもこの前初対面でいきなり殴ってきたよね? あれまだ許してないんだけど」
「なっ…!」
「初対面で殴るなんて常識的に考えておかしいよねぇ? 悪いと思ってるんなら戦わないで欲しいんだけどな。そしたら許してあげるよ」
「み、耳を貸すな! 許してもらわんくてもいい! 私が許してやる!」
「お姉ちゃんは黙っててよ。これは私とタツヲミさんとの問題なんだから。部外者でしょ?」
私は笑ってタツヲミさんに近寄る。タツヲミさんは悩んでいるようだった。罪悪感もあるんだろう。だからこそそこにつけこむのだ。
私の前で弱みを見せたからこそ、負けなんだよ。
「過去の事はなかったことにはできないんだよ? その分の償いをしなくちゃ一生付きまとってくる。それでいいの? タツヲミさんもそれは理解してるんじゃないの?」
「ぐっ…」
「タツヲミ…。パンドラ! お前卑怯だぞ!」
「卑怯? お姉ちゃんたちは私を狙ってきたんでしょ? 卑怯って言われるのは違うんじゃない?」
「姉さん、すまねえ…。俺は…戦えねえ。たしかに、俺が悪かった。ここでそれを忘れて妹さんを殴ることなんざできねえ…。すまねえ!」
「タツヲミ! 弱い自分でいるつもりなのか! そいつはただ戦いたくないから…!」
「弱い? お姉ちゃん。タツヲミさんを弱いっていってんの? どんだけバカなの? 賢明な判断でしょ。逃げることが弱いってなんでそう思ってんの?」
私はお姉ちゃんに詰め寄る。
「逃げることが弱いのなら立ち向かうことは強い事なの? 明らかに勝てない相手に立ち向かうことがいい事なの? それで死ぬのなら本望なの? 夢見がちじゃない?」
「ゆ、夢見が…」
「そんな夢見て自分の命を投げ出すこと、それが強い事? 強いことは無謀ってこと? だからお姉ちゃんは弱いんだよ。馬鹿みたいにぶっ壊れてさぁ!」
「て、てんめぇ…!」
「私はお姉ちゃんが好きだからこそ言うんだよ。なんでも悟ったような顔をしてるくせに全然なにもわかってないんだもの! そんなお姉ちゃんが心配なんだっての!」
私は煽る。
別にお姉ちゃんが嫌いじゃない。どちらかというと好きなほうだ。昔から優しくしてくれた。たぶん、仲が少し悪くなってきたのはあの事件がきっかけだと思う。
私はあの事件をきっかけに強くなろうとした。
お姉ちゃんはあの事件をきっかけに閉じこもった。
姉妹の仲もあの事件のせいで決裂したのかもしれない。私はお姉ちゃんにこういうことを言えるように成長してしまったからな。
「私が…わかってない?」
お姉ちゃんは、怒りで震える手を止め、何かを考えていた。
そして、ぶわっと涙が。
「わかってないけどわかろうとしてるんじゃないか! 何が悪いんだよ! 私の何が悪いのよぉ!」
「ま、マジ泣き?」
「悪かったわねぇ! 悔しいけどあんたの言う通りなのよ! それでも…わかろうと努力してきてるのよ…」
「わ、悪かったよ。お姉ちゃんの努力は否定するつもりはないっての…」
と、その時また扉が開かれる。
どうやら挑戦者のようだが…。私はすぐさま魔法を放った。
「ちょっとうるさい」
と、男性プレイヤーがポリゴンと化して消えていく。
どうしよう。泣かせてしまった。女を泣かせる男は敵というが女を泣かせる女ってやっぱ敵なのだろうか…。




