犯人は誰だ?
翌日、私らが現場に行くと日下部刑事となんだか中年のおじさんがいた。
「日下部さーん」
「何しにきた」
日下部さんは怒りの目を向けてくる。私が何かしたのだろうか。思い当たる節がない…。私は知らないところでも恨みかってるからなー。どこで恨みを買うか分かったもんじゃない。
「警察官を退かしてパトカー奪った挙句俺に許可もらったって言いやがって…。俺がクビになるとこだったぞこの野郎」
「あっ、そういやそんなこと言ったね」
「ドラゴンを討伐したことでチャラになったがお前一歩間違えたら本当に捕まってたんだぞ…」
まー、罪状は車両盗難…。窃盗に値するのかな?
車を奪ったわけだから。まあ、そのパトカーがおじゃんになったけど。
「まあそこまでにしておけ日下部。今は目の前のことだ。この惨劇はひどい。ドラゴンがここまで強力だとは…」
と、中年のおじさんが言った。
「誰ですかこの人」
「俺の上司の福井警部だ」
「福井 淳哉だ。よろしく頼むな、嬢ちゃん」
福井さんは結構かっこいい顔をしている。
「それで、あのドラゴンはどこから来たんだ?」
「異世界、だと思います」
「異世界ィ?」
と、福井さんは疑うような顔をして日下部さんを見る。
日下部さんはやっぱ信じてもらえないかあと言わんばかりの表情を浮かべていた。
「異世界はあります。俺がこの目で見てきました」
「本当かぁ? お前、幻覚でも見た…。ヤクやってんのか?」
「やってませんって!でも、ドラゴンはこの世界にいるはずがないとなると異世界ってしか考えられないでしょう!」
日下部さんがそう言うもイマイチ納得がいってないようだ。
まあ、非現実的な話だが信じるしかないのだ。
「とりあえず、あとは自衛隊に任せて俺らは署に戻るぞ。災害復興は俺らの役目じゃないからな」
「はい」
と、日下部さんと福井警部はパトカーの中に入っていく。
私は瓦礫の上に座った。私はあの穴の犯人探しをしなくちゃならない。が、すでに目星はついた。怪しい言動をしていた奴がいた。
「それにしてもドラゴンがよくこれたわね。私らが来たような穴があるのかしら。でもなんで…?」
「人為的だよ。だから数が減らない」
「だろうな。詳しくは知らないが最近魔の森でも異界に繋がる穴というものが出ていると報告を受けている…。エディットが言うには誰かがこじ開けたと言う感じなのだそうだ」
無理やり開けたのだから残骸が残っていてもしょうがない。
それに開けるには自分の魔力を使う必要がある。犯人は異世界の人…。つまり、私らの世界の人間…と言うわけではない。むしろこの世界の人間だと言うこともある。
「犯人探しをするのかしら。でもろくに証拠もない、手掛かりもないんじゃ流石のパン子も…」
「いや、怪しい人ならなんとなくは」
ただ、本当に違和感を感じただけだ。
空知に対してもまだ違和感は拭えてない。日下部にも違和感はある。だからこの世界の人間全員に違和感があるといっても過言じゃない、が。あいつは油断していたのか? それとも、私じゃ気づかないと思ったのか?
「…ま、私はそいつの行動を監視してみるさ」
「だ、誰なの?」
「日下部刑事…」
「あの人!?」
「の上司の福井警部」
「あの人か? 別に怪しくもなんともないが」
「いや? あの人の言動に違和感を持っただけだよ。だからまあ、目をつけた感じ?」
あの人が犯人かはわからないが、監視してみる価値はある。




