イベント終了
目が覚めるとログアウトしていた。
「この私が二度もしてやられるなんて……。ほんっとにムカつくなぁ…」
私は爪を噛む。
タケミカヅチ…甲地はほんとに私のことをよくわかってるっていうか…。私もそういうことをするとは思っていた。だけどやる可能性としてはゼロだった。
甲地の実力的に考えて失うと相当デカい痛手となりえるからだ。だから自爆なんてことはしないはずと思っていたが、予想が外れた。
「あー、クソ、悔しい…。まじで甲地嫌いだわ……。相手にしたくない」
「パン子ですら相手にしたくないのか?」
「運がいいんだよ。それに、状況判断が本当に上手い。私よりは…とは言わないけど私と並ぶくらいにはいい線いってるんじゃないかな? だからこそ嫌いだわ」
私はヘッドギアを置き、トイレに向かうことにした。
トイレから帰ると月乃もログアウトしていた。
「負けた?」
「そりゃ五対一よ? 勝てるわけないじゃない」
「フルリンチだもんな」
今回のイベント戦、見事魔王軍の負け。
甲地が本当に厄介だ。いや、たぶんあの時白露が引きはがそうとしていなかったら勝ててたんだろうが……。敵の狙いは白露だったんだろうな。
白露が爆弾をどうにかしようとすると読んで自爆特攻をしたんだろう。
「……腹いせに今度会ったとき無視してやろうかな」
「いいわね。武宮君哀しむわよ」
「負けて嫌がらせはよくないと思うぞ」
「いい子ちゃんぶるなよ! 私はとっても悔しいんだよ! 二回も同じ相手に負けるなんてこのパン子ちゃんのプライドが許さない! いつか絶対百倍にして返してやる…!」
「パン子に同意よ。ほんっと気に食わないわあいつ…」
人をあまり恨まない白露と違って私と月乃は普通に人を恨むからな。
「三人とも。良いバトルだったよ」
「……いつ次再戦申し込む?」
「明日でいいんじゃないかしら」
「おい、二人とも会社の人が…」
「明日ぶっ殺す!」
「そうね。ほんとに百倍にして…」
「あのー」
「おい!」
白露が怒鳴ったので私たちは前を向いた。
「三人ともありがとう。これ、一週間分の給与明細。銀行に振り込んであるから」
「あ、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「あざっす」
私たちは封筒を受け取り、会社を後にすることになった。
で、帰りの喫茶店。封筒をあけて給与を見てみる。計8日間だった。で、金額は九万という数字があった。
悪くない、のかな? 知らんけど。
「初めて稼いだぞ」
「これじゃなんも買えないわねえ」
「感覚麻痺してきたな私も」
とりあえず何に使おうかな。
「私はとりあえず布団を買うぞ! 今の使ってる布団がボロボロになったからな!」
「それぐらいなら…」
「いや、私が買う。これは私が決めていたんだ。だから出すな」
「はいはい」
布団、布団かぁ。
ベッド、誕プレで届いたからなぁ。あれめちゃくちゃいいやつ。
「いい布団を買うぞー!」
「相当やる気出てるわね…」
「ま、やる気出たならいい事でしょ」
私たちはコーヒーを飲んでいた。




