最高にハイってやつだァァァァ!
3月11日。それはある人たちにとっては忘れられない日にちだろう。もちろん私にも忘れられない。
「私16になったぜぃ! いやっほおおおう!」
とまあ、今日は私の誕生日なのである。
つっても、学校にも今行ってないから祝う人は誰もいないんだけどね。悲しきハッピーバースデー! ハッピーバースデートゥーミー! おめでとう私!
「眠ちゃん。これ、誕生日プレゼント。今までごめんね」
と、部屋で自分の誕生日をかみしめていると叔母さんが入ってきて、何か小さいものを渡してきた。なんだろうこれ。
叔母さんは部屋から出ていき、私は中を開封してみた。
「うおっ! まじか!」
私に渡されたのはイヤホンだった。
完全密封型で音漏れはしない、かつ頑丈で音質も滅茶苦茶いいとネットで好評のやつ。何よりデザインが好きだった。ただ私は持っていなかった。なぜならこれは限定生産だったからだ。
というのも、これはあるイベントの物販で売られていたものであり、転売とかも多かったし、結構偽物も出回っていた。が、この品質は本物とみて間違いないだろう。
「え!? 叔母さんどこでこれを!? 転売してたやつ買ったのかな!? でもうれしー!」
勉強中には音楽をかけてやるのが私で、雑音とかもちょっと気になるタイプだった。ドアが開く音も聞こえるくらいには。
ただこれはいいぞ。勉強もはかどりそうだ! くう! 勉強しよう!
私はイヤホンを早速耳につけて机に向かうのだった。
ひたすら大学の教科書を開き、ノートに写しながら自分の解釈を踏まえて書き綴る。
やっべえ、超頭に入る。いつも以上にやれる! このイヤホンやっべえ! 私のテンションが駄々上がりだよ!
私はいつも以上に勉強にのめりこんでいた。ひたすらシャーペンでノートに書いているともうノートがなくなったので次のノートに取り掛かろうとノートを手に取ると、肩をとんとんと叩かれる。
私はイヤホンを外し振り返るとそこには月乃と白露がいた。
「ん? なにしてんの?」
「あんたなんかものすごく高ぶってるわね」
「わかる? いやー、めっちゃいいイヤホンを叔母さんからもらってさー。めっちゃくちゃいいの! これ勉強に集中できるわー」
「はた目から見てると怖かったぞ……」
「一種のスタディーズハイ、よね。いや、こいつは本当にできるからこそどうしようもないんだけど」
「君らもどうだい! 一緒に、勉強しようぜ!」
「私、用事を思い出した」
「奇遇ね。私もよ」
「そんなこと言わずにさ。ほら、座って座って。今日は私の誕生日だからこそ勉強しようじゃないか、なぁ二人とも」
私は二人を強引に座らせ、ちゃぶ台をもってくる。
そして二人には高校二年で習う数学の教科書を渡した。二人はこちらを見てくるが私の好きなことをさせてほしい。
「わからないところは教えてあげるから! さあ! レッツスタディー!」
「ちょ、あ、遊びに来ただけじゃない! っていうかいつにもましてあんたテンション高すぎ!」
「いろんなことがあったから吹っ切れたんだろう。あ、すまない。ちょっと腹を下していてな。トイレ行ってくる」
「ここでしたら?」
「ぶっ!」
「冗談だよ。本当は下していないんでしょ? 目が右に行ってる。嘘をついてるからさ」
「こいつの前で嘘はダメよ! すぐばれるっての! どうにかして用事を考えるのよ!」
「君たちが家に来た時点で用事ないのはわかってるから」
「ダメよこいつ! ものすごくハイだわ! 手に負えない!」
「し、仕方なく勉強するしかない、か。月乃、骨は拾ってくれ」
ふははは! 最高にハイってやつだァァァァ!




