腹が…減った!
私が話しているとめまいが起きた。
「貧血かな…」
「そりゃ三日間ぐらい寝てたら腹でも減るわね。何かごちそうするわよ」
「ん、じゃあハンバーガー」
「そんなのでいいの?」
そんなのでいいの。
断食した後に普通の食事はダメだというが、たぶん私は大丈夫。どうせ私だからどうにかすると思う。
「…俺、お嬢様はファストフードなんて食べねえと思ってたぞ」
「俺も…」
と、周りの会社員の声がちらほらと。
そりゃ、普通のお嬢様なら食べそうにもないメニューだ。実際、フィクションでは食べたことないとか言う人もいるし、たぶん現実にもいる。
だが、それはあくまで蝶よ華よと育てられたようなやつだけだ。
「私だってファーストフードは食べるっつの…」
「ま、普通のお嬢様じゃないからな」
「激しく同意だ」
「あんたら……」
普通のお嬢様なら好き好んでうちらの高校に来ないし、天蘭学園のようなところには普通行くのだ。
そして、何より普通のお嬢様ならボディーガードの一つや二つはつけるし、泥遊びなんてもってのほかだし、登下校歩くわけないし。こいつ意外と私らみたいな生活してるのよね…。
「……私だってお嬢様みたいなところあるわよ。たとえば…漫画喫茶は利用したことない!とか」
「私もないなあ」
基本私は気になったら即購入するタイプだし漫喫いって読もうとは思わない。
「ネカフェもないわ!」
「私もないな。行こうとは思えん」
「私は数回くらい」
というか月乃。今更お嬢様アピールはやめないか?
「す、スーパーで買い物は実はしたことないのよ」
「たしかにそれはお嬢様っぽい」
「だって自分で料理しないもの。コンビニ程度ならあるけどスーパーはないわ」
たしかに月乃とは行ったことがないな。私はたまにいくし、そこにしかないお菓子や飴もあるのでよく利用している。白露と偶然会った記憶は少しあれど月乃と出会った記憶はほとんど……。
「…でも絶対買い方とか熟知してるよ」
「……無知は恥ずべきことですから」
「世間知らずってわけじゃないのがお嬢様っぽくないんだよな」
「…もういいわ二人とも」
と、月乃が少し悲しげだった。
「ともかく、早く行きましょうよ。私はもう決めたわ。ビッグマッキュにするわ」
「ダブチだろ」
「マッキュか。ポテトがうまい」
私たちの好みは別々で、ハンバーガーにはチーズが入ってないとあまり食べない。いや、他も食べるけどチーズバーガーが至高なのだよ。
それはまあいいが、許せないのはトマトが入っていること。トマト食べれないわけじゃないがどちらかというと苦手っていうか。ケチャップとトマトジュースなら行ける。
「……あの! 俺に、奢らせてください」
「あら、私たちとデートしたいの?」
「そ、そういうわけじゃ…」
「ま、いいでしょう。出してくれるなら助かるわ」
そういって私たちはマッキュへ向かうことになった。




