犯人たちの追及
パンドラが閉じ込められて次の日。
運営の人がログアウトできるプログラムをせっせと作っていた。
「それにしてももう少しで誕生日だっていうのに災難よねえアイツも」
「いんがおーほーだな」
「…否定できないくらいにはあいつ悪い事するものねぇ。ゲームで」
パンドラはゲーム内だと人殺しも厭わないぐらいにはものすごくタガが外れているというか。現実でもどこか一つ頭のねじが飛んでいるような感じなのよ。
そこが怖いっていう人もいれば、そこがいいという人もいる。
大体、あいつと親友である私と白露も頭のねじが飛んでるといえば飛んでるかもしれないわね。
「……で、パンドラのゲーム内での様子はどうなってるのかしら」
私はパソコンを操作し、パンドラを見る。
なんと優雅に紅茶を飲んでいた。
危機感ないわねアイツ……。閉じ込められて死んでしまうとこちらにも帰ってこれないから実質死ぬということなのに。あいつのことだから既に予想出来てそうなものだけれど……。
「あいつ危機感というものを持たないのよねぇ」
「優雅だな」
「お茶飲んでる場合じゃないのよ。普通こういうこと起きたらパニックになるはずなのに……」
「まあ、パンドラがすることは死なないことだけだしパニックになったらそれこそ死ぬ可能性が増える。パンドラが魔王城に引きこもっているのはいい判断じゃないか?」
「それはそうだけど…」
魔物に襲われない、という点ではいい判断かもしれない。
でももうちょい危機感というものをっ……。その時だった。急にパソコンが真っ暗になる。と、同時に全社員のパソコンがシャットダウンしていた。
「なに!?」
「……悪いが全員、パソコンを閉じさせてもらった」
という声が聞こえる。
社長が立っていた。その隣には複数人の社員が。勝ち誇ったような顔をしている。
「……えーっと、なぜ電源をお切りになられたのでしょうか社長」
「……こいつらが自供した」
と、いうとぎょっとして複数人の男性は社長を見る。
「こいつらが犯人だとな。それで、全社員のパソコンにウイルスを仕込んだ、とも自供した」
「な、何を言ってるので? 社長」
「お前らはまだわからんのか! なぜ虚偽をでっちあげて全員を蹴落とそうとする! お前の会社じゃねえんだぞボケ!」
「ひい!?」
「極めつけは私の息子だ。お前が発案者らしいな」
と、視線の方向を見るとだらだらと汗を流しまくって焦っている男性がいた。
「お前もこい。お前らは犯罪者として突き出すからな。お前らが何をしたのか、きちんとわかってもらわないといけない」
「そ、そんな! 父さん!」
「もう俺はお前の父さんじゃない。うちには犯罪者の息子はいらない」
というと、絶望している眼をしていた。
「なら、私が告訴しても大丈夫ですよね?」
私が声を発する。
みんなの視線がこちらに向いた。
「ええ、どうぞ」
「そう。なら、パン子、私、白露の分纏めて訴訟を起こすわ。ああ、私こういうものだから」
と、私の名刺を渡すと、相手はさらに絶望した。
「な…なんであなたのような方がここに…」
「私もこのイベントに参加してたのよ。狙いはわからないけどでも、楽しいイベントを中断されて不快、かつ私の友人が閉じ込められたっていうのが最高にむかつくわ。あなた、もう裕福な生活は無理だと思ったほうがいいわよ」
「ひいいいいい!?」
と、男性数名が悲鳴を上げて逃げだそうとしている。
が、白露が立ちふさがった。そして思いきり足で薙ぎ払い全員転ぶ。
「…阿久津さん。球磨川さん。本当に申し訳ない。うちのバカ共が…。ウイルスを排除次第直ちにあなたがたの親友をログアウトさせる」
「ええ。大丈夫ですよ。でも、そちらこそ今回の件で信用がガタ落ちですね」
「そうなんだよ。まったく」
「で、あの方々がやった理由というのをお聞かせ願えます?」
「あのプログラムをバグだと言い張ってな、気に入らない社員を首にさせるつもりだったらしい。子育てを間違ったようで……。自分の醜態でもあります。本当に申し訳ございませんでした」
なるほどね。
気に入らない社員を首にするために……。そのためにこんなことをしでかしたと思うと腹が立つ。そんなくだらない内部争いに外部が巻き込まれるとは……。
あのプログラムを作る才能はすごいと思うが、それでも腹立たしい。
「私もこのゲームをしているので信用がなくなるのは惜しい。この件を機にスポンサーも離れるかもしれませんね」
「お恥ずかしい限りですがこんなことをしてしまったからにはそれも当然でしょう」
「それもそうですが、なら、困ったらうちに来てください。資金提供ぐらいはしますよ」
「助かります」
まあ、こんなことでゲームが終わるのも嫌だからね。




