シャドウで観光
私はログアウトした。
「負けちゃいましたね」
「あはは…悔しい」
まさか二日目で負けるとは思ってなかった。
私はとりあえず水を飲む。七日間はここに拘束されるらしい。なので私はとりあえずお菓子をぽりぽり食べていた。
「もうあのシャドウアバターでログインできないのですか?」
「もうボスエネミーとしては無理ですし戦えませんがログインは可能ですよ」
「じゃあログインして観光でもしてます……。悔しい…」
私はもう一度ヘッドギアをかぶる。
ゲームの世界に降り立つとタケミカヅチが弓矢を眺めていた。そして私に気づく。
「またやるの?」
「いや、もう戦えないからこの姿で観光……」
「そうなんだ。じゃあ一緒にいく?」
「うん」
私は素直にタケミカヅチについていくことにした。
ダンジョンの外に出るとそこは魔の森の中らしき場所。
「鑑定してみるとパンドラさん魔物っていうカテゴリーなんだ」
「魔物…」
まあシャドウだし。
「気になるのはワグマとビャクロのところだな。私はどうなってるかは知らないんだ」
「うーん、じゃあ、大剣欲しいから行こうかな」
「遺産二つも取るの?」
「いや、一つはプレゼントに…。弓をプレゼントしたくて」
……。
「好きな子でもできたん?」
「えっ、あっ、いやっ、そういうわけじゃなくてパン子さんゲームの世界で見当たらなくて休んでるらしかったから!」
「えっ、私に?」
「う、うん」
「ありがとな! 自分にあげるもんを自分で守ってたのか! あははっ!」
なんだよじゃあ負けてよかったじゃねえかよ。よくないけど。
でも、この敗北を機にカーレースも克服しよう。タケミカヅチに勝てなきゃダメだな。まさかこんなとこで敗北するとは思ってなかったよ。
この悔しさはいつか返してやるからな……。
私は意外と負けず嫌いなんです。
「とりあえず向かおうか。満腹度…は減らないよね。魔物だし」
「まあね」
「でもこっちは満腹度そんなないから食べに行こうよ」
「わかったよ」
でもお店に入ると視線がすごいんです。
めっちゃ真っ黒だし、っていうかなんか出てるし。お客さんが全員こっちを見ている。流石に見てみぬふりはできないだろうな。
でも私は鋼のメンタルなんで見られても大丈夫です。
「とんかつ定食一つ」
「よくその状態で平然としてられるよね…」
「もう負けちゃったし観光ぐらいしかすることないの。このアバターで戦っても無意味だからさー」
たぶんワグマもビャクロも驚いていると思う。私が一番先にやられるとは予想もしてなかっただろう。私もしてなかった。
というか、負けるつもりはさらさらなかった。
「純粋に悔しいんですよ私はね。よく私がカーレースが得意じゃないってことわかったね」
「いや、俺が得意なやつを選んだだけだから…単なる偶然だよ」
「あら、そうなの?」
「言った通り友達に何度も付き合わされてカーレースの技術は結構うまくなったんだ。こっちもちょっと煽りプレイしてごめんね」
「いいよ。気にするわけがない」
煽られること自体は別にいいのだ。
そう話していると定食が運ばれてきたので美味しくいただいた。カツがさくさく。超うまかったです。




