白露のヘッドギア
とりあえず今日も家に帰ってきてログインしようとした時、携帯に通知が来る。白露からだった。
至急来てくれと言うので白露の家に向かう。
「どしたの?」
私はいつもの服装で訪れる。
スリッパをはき、白露の部屋に行くと白露は少し涙目だった。
「私のヘッドギアが動かないんだ!」
「故障……?」
白露が持っているヘッドギアを見る。
「うっわ、それマジで使ってんの!?」
と、驚くようなものだった。
ヘッドギアの歴史を軽く振り返るが、一番最初に出たのはなんと平成時代からだ。その時はゲームなんてものはなく、映像を見れるよってぐらいだったが、時代は進歩し、ヘッドギアで入り込むゲームができたのはその数十年後のこと。そこで有名なゲームと共にヘッドギアが出され、その数年後に一世を風靡したAnother Arcadia Onlineが出た。それと同時にヘッドギアも新しく出されたのだ。
で、なぜこれを言ったかというと、白露が使っているヘッドギアが、A2Oより前にでたゲームできる中では一番型の古いヘッドギアなのだ。
「これよく使ってたな……。これ結構ラグいでしょ」
「ら、ラグい?」
「IUOをこれでやってたって奇跡なレベルだよ……」
「そ、そうなのか?」
私が持っているのは一番最新のものだ。それは月乃から買ってもらったもの。
「な、直せないのか?」
「そりゃ見てみなきゃわからんけど……。ヘッドギア自体精密機械だから私に相談するよりメーカーに問い合わせたほうが楽だよ……。いや、軽いもんなら直せるけどさ」
ヘッドギアだって機械だ。
一応メンテナンスは私もしている。こういった故障原因は大抵が埃が詰まっているとかそんなんだけど……。
「埃詰まってるっちゃ詰まってるけど動かないってレベルでもなさそうだしな……。とりあえず工具もってきて。中開けてみてみる」
「わ、わかった!」
「ちっちゃいドライバーな。普通の大きさだと無理だから」
たぶん私の推測だと中の配線が切れたとかそういうたぐいだろう。それなら部品が必要なんだけどこの型落ちしてるヘッドギアの部品ってもうない気がする。
中見るまで分からないけどそこまでひどくないもんならなんとかなるかもしれないけどさ。
「こ、このサイズでいいか!」
「おーそれでいい」
私はドライバーを受け取り中を開けてみる。
開けて、私の口からは。
「うっわぁ…」
という声が漏れ出てしまった。
「そ、それほどひどいのか?」
「ひどいってもんじゃないよ……。中の配線が溶けてる……。めっちゃ危ないじゃん。運がよかったというべきか……。これでよく動いてたな今まで……。つけてて熱いと思ったことない?」
「そういえばゲーム終わった後たまに熱いと思うことはあったが……」
「オーバーヒートしてるんだよ……。これもう買い替えたほうが早いね」
今まで重要な配線がなくなっていなかったというのが事実だ。
決定打はこのデカい黒のゴムに包まれたこの線が切れたことだろう。これはたしか脳波を……。とかそういうのなので、これが切れてしまったらゲームもできない。
「買い替えるっていっても金がない……」
「これ、たぶん業者に頼んでも修理不可能だよ。素直に捨てたほうがいいレベル。っていうかこれもう使わないほうがいい。下手したら火が出るよ」
「うぐぐ……」
「それこそ月乃に頼みなよ。月乃だって白露ともゲームしたいんだから買ってもらえばいいじゃん」
「だ、だけどこのまえトレーニング器具買ってもらったばかりだし……」
白露はなんだか悩んでいる。
月乃だって友達のためなら金使いたい人なんだから頼ればいいのに。
「わかったよ。じゃ、私が出してやるから。ほら、今から行くぞ…と言いたいがちょっと待ってな。この中のデータをまずパソコンに移す。新しく買うとまた一から始めないとならないからな」
「そ、そうか……」
私はパソコンを起動し、プラグを繋いでデータをパソコン上に移す。
「よっし、終わり。んじゃ、いくか」
私たちはゲーム店に向かった。




