歌が聞こえる
心配だからかユリカもついてきた。
「かの亡霊は歌もよく好んでいたので近づいてくると歌が聞こえてくるそうですよ」
「なるほど、イイ情報だね」
もう日が落ちた。ヴァレンタイムに突入しただろう。
辺りは静まりかえる。風が吹き、草木が揺れた。歌は聞こえない。まだ近づいてはいないようだった。
私はとりあえずお菓子をたくさん食べている。
「…今日はこの近くにいないのでしょうか」
「さあ」
と、草木が揺れる。
森の中で、ここはソーダの泉とかは近くにない。が、歌が聞こえないので大方プレイヤーだろうな。そう思いつつも視線をやると案の定プレイヤーだった。
二人組の女性だった。
「あっ、人だ! 人だよー!」
「こ、怖かったぁ」
「どうかしたんですか?」
「えっと、さっきあっちで食べ歩いてると歌が聞こえてきて……夜ってこんな不気味になるでしょ? その、ものすごく怖くなってさ、逃げてきちゃったんだよね」
「……なるほど、じゃ、あなたがたソーダの泉周りに行くことお勧めしますよ。あそこはなんもないので」
そういうと情報ありがとうとお礼を言われて去っていく。
「さっきのやつらは近くで歌を聞いたって言っていた。じゃ、近くにいるってことだよな」
「そうですね。移動しましょう」
私たちは移動することにした、が。
「ん? なんだあのお菓子」
私が目にしたのは木になるクッキーだった。そこはビスケットの木なのに。
「ああっ! 金のクッキーです! 夜にしか実はならず、朝になったらなくなっていてどこになるかはわからないけど神が好むと言われてます! 集めるといいことあるかもしれませんね」
「なるほど、でもあの高さだからなぁ」
浮遊は私にはもうない。
木を登るしかないのだが。私は木に足をかけた瞬間だった。どこからか声が聞こえてくる。それはリズムに乗っていた。
「ゆられてい~く~よ~……」
「やべ、来てるな」
「諦めて去りましょう。ヴァレンタインの半径5m以内は危険です」
ここで襲われるわけにもいかないので私たちは移動することにした。
それにしても夜にしかクッキーの実はならない、か。流石に厄介だな。あのヴァレンタインにビビりながらやるっていうのは正直嫌なのだが。
「ヴァレンタインが後ろにいると確信したとき、絶対に振り向いてはいけません。それもルールです。確信があって振り向いてしまうと襲われてしまいます。というか、歌が聞こえたら振り向いてはいけませんよ」
「わかった」
絶対に振り向いてはいけない、か。
そういえばビャクロたちは元気だろうか。もうヴァレンタインに襲われた後だとしたら流石に笑えないんだけど。
どこでログアウトするか、そこら中でログアウトしちゃダメっていうのは辛いな。




