倒れた叔父さん
なんて言えばいいかわからない。
「……パン子」
「……わかってる」
今すぐ走り出したい気持ちを抑える。
やっぱり、神様は信じない。信じられない。神様は私のことが多分キライだろうな。嫌いだからこんな嫌がらせをしてるんだろ?
……私から何もかも奪う神なんて信じられるわけがないよな。
「今すぐ病院に行こう!」
「…………」
「せ、先生。私たちもついていって……」
「行くなら早く車に乗れ! 命がかかってるんだぞ!」
教頭が怒鳴る。
なぜ私の叔父の為にそこまでがなりたてられるんだ。
「……ははっ」
思わず笑ってしまう。
ここまで悲劇が続くと笑えてしまうな。もう、どうでもいいわ。叔父さんが倒れても……私の目の前からすべていなくなるんだから。
私って死神かなんかなの?
「パン子。さすがに……」
「大丈夫。叔父さんはこれぐらいじゃ死なない。熊に出会って生きて帰ってくるほどだぞ」
だから、大丈夫だ。
きっと、きっと。叔父さんなら大丈夫だ。大丈夫大丈夫大丈夫。叔父さんなら大丈夫だって。でも……万が一。もしかして……。一抹の不安が頭に湧く。
その不安のモヤは次第に大きく、でかくなっていった。
「大丈夫だって……」
私は、教頭に連れられて、東病院へと向かった。
結論から言うと、叔父は無事だった。
「すまんな。過労死寸前だったらしい」
「……よかった」
私は、安堵の息を吐いた。
大丈夫だって言っただろう。
「叔父さん。もう仕事辞めなよ」
「だけどなぁ。この歳になって再就職はきついっていうかなんというか。俺もう48だし」
無精ひげを生やした叔父さんは若くない。
私の父とは一歳差の弟さんだ。たしかに50間近で再就職というのはきついものがある。けど、これ以上無理をしてほしくないというのが本音だ。
「……なら私の会社に来るかしら。夢野さん」
「……誰だいこの子」
「私は眠の友人の阿久津 月乃と申します。うちの会社は結構有名だと思いますが」
と、名刺を手渡していた。
その名刺を見て、叔父さんは鼻で笑う。
「一度落とされたところにいけるわけがありませんよ」
「落とされた?」
「昔……受けたんですよ。大学出た時に。でも、結果は祈られただけでした。今更……」
「今更なんかじゃないでしょう」
白露が口をはさむ。
「昔は昔です。今は今。昔ばかり見ているのは老害と変わらないだろう」
「白露」
「第一、昔はこうだったからとかいうのは単なる逃げでしょう。過去を理由にして逃げるなんてみっともない真似、娘の前でするんですか?」
「…言ってくれるね、君」
「出過ぎた言動なのは承知です。ですが、仕事を辞めるあなたに再就職の伝手はないのでしょう? 昔なんかに拘らず月乃の会社に入ったほうがパン子も安心すると思いますがね」
「白露……」
白露も、私のためを思ってくれている。
の前にこう言ったこと言えるんだという感想が湧いてきた。
「だが、私はあなたに何もしていない。それなのにいいのか? 単なる情けだろう?」
「いえ、私はパン子が悲しむ顔みたくないだけですから」
「……はぁ。わかった。いれてくれるとたすかる」
叔父さんが折れた瞬間だった。




