賢者の石について ②
翌日、私たちは馬車にのっかり、王城に向かっていた。
「用もないのに僕たちをいれてもらえるだろうか」
「まあみてなって」
王城前に停まり、私たちは外に降りる。
そして門番にパンドラだけどアデュランかレオンいる?と聞くと門番も私を知ってるのかええいますよ、案内しましょうか?と気前よく案内してくれた。
そして、王城内に入る。
「ぼ、僕は初めて王城に入ったぞ……」
「レオンって…今の王の名前でしょ!? 先生もしかして知り合いなの!?」
「先生ってなんか不思議なやつだな」
と、話しつつも私たちは謁見の間についた。
謁見の間ではため息をつきそうにレオンが肘をついて座っている。
「で、パンドラさん。今日は何をやらかしたんです?」
「あの、やらかした前提で話すのやめてくれない?」
「だってあなたがこういう訪問するときは大抵やらかしたか、何かを見せびらかそうとしてくるでしょう……」
日頃の行いってやつだな。
「今回は頼みがあってさ」
「頼み?」
「賢者の石の保管情報について知りたい」
「……なぜそれを」
とレオンが聞くとアイリーンのほうに視線が言った。レオンもなんとなく悟ったのか頭をおさえている。そしてため息をついていた。
「アイリーン。なぜ機密情報を話した……」
「だって……三人は信用できるしいざとなればどうとでもできるから……」
「だからって話してはならないだろう……。まあいい。ハート家は信用なるからな」
「グルツは? グルツだって信用できますよぅ!」
「アストラ家はいいうわさがないと言っただろう……。もっとも、今は地道な運営をしているらしいが大半はあのグルツの父親のせいだ」
と、ここでもグルツは信用されてないみたいだった。それにグルツはちょっと悔しそうにしている。レオンはため息をつき、後ろの三人を見るのだった。
グルツは悔しそうに拳を握り締めて、爪が食い込んでいるのか血が垂れている。
「僕はまっとうにしているつもりなのにここでも父が邪魔をするっ……!」
「大変だな、お前も」
「うるさい! 王よ、今の僕ではだめですか! 僕は父の後を継いだがまっとうに運営をしている! それじゃダメでしょうか!」
「過去の評判は簡単にぬぐえるもんじゃない。運がなかったと思うべきでしょう」
それはそうだ。
いくら自分が何もしてないとはいえ、身内にあんなのがいたんだ。レオンが疑うのも無理はない。あのアストラ子爵の息子だからだ。
子は産まれる親を選べない。
「おいおい王様よ、昔のアストラ家じゃなくて今のアストラ家は見ないのか?」
「もちろん見てはいるが……。賢者の石は機密情報で保管状況ですらあまり口外できない。過去の事も含めて審議しないと危険だからだ」
「それもそうだが……」
「納得がいかないよ! 今更グルツだけ仲間はずれにしたくない!」
と、グルツ以外の二人がごねている。
レオンはそれに頭を抱えていた。私はあえて黙っていた。この場合、レオンが言うことのほうが正しい。賢者の石のことを知られるというだけでもまずいのに、過去に悪評があったとなるとその子もその子だろうと思う。蛙の子は蛙とよくいうしな。
「王、なんとかならないっすか? こいつは俺らが保証するんで」
「…………せめて侯爵以上の地位のあるものではないとだめだ。無論、その娘とか息子ではなく当主のな」
「じゃ、私が保証するよレオン。これでも魔王軍最高幹部だしいいでしょ? それに、私への恩返しとして入れてほしいな」
というと、レオンは黙ってしまった。
そして仕方ないと言わんばかりにため息をまたついた。
「わかった。あなたには本当に恩義がありますし今回だけはいいでしょう……」
「い、いいのか王! ありがとうございます!」
「賢者の石の保管記録を見て何を調べるつもりかは知らないが……。悪用はするなよ」
「もちろんです王よ! 心から感謝いたします!」
「もうよい。ま、グルツ。父親のことを忘れるぐらいまっとうに利益を上げよ。これからも精進すること」
「かしこまりました。このグルツが父から継いだ負の遺産を正の遺産として王国が誇れるような商会にしてみせます」
「その心意気だ。楽しみにしているぞ」
と、レオンは立ち上がる。
「保管記録は私の部屋にある。外部に漏れては大変だからな。ついてくるがよい」
というので、ついていくことにした。




