さすがは金持ち!そこに痺れる憧れるゥ!
目の前に甲地が座り、ようやく口を開いた。
「なんで、うちが詐欺被害に遭ったこと知ってるの?」
と聞かれた。図星か。
「たんにかまをかけただけだよ。私も詐欺にはいい思い出ないから」
「えっ……」
「甲地にはいってないっけ。私も一度騙されたことあるんだよ」
そういうと、甲地は私の話を聞く体勢になった。
「小3の冬にね、両親が詐欺に騙されたんだ。結構な金額取られてさ、で、両親は首をつって自殺したの。それをみて詐欺は嫌悪してる。ほんと、ムカつくよね」
「パン子さんもそういうことが……」
「だから人間不信になる気持ちもわかるよ。私もそうだったもん。一時期信じられなかったんだよね。人を。今も出来てるか微妙なところだけど」
私はそう微笑んで頭を掻くと、甲地はまた口を開いた。
「うちは……小さい時から仲良くしていた伯父に騙された」
「伯父?」
「うん。小さいころから仲良くしてた伯父が保証人になってくれって言って来てさ。母さんは信頼してたし保証人になった。五千万。だけど、その翌日、伯父さんが逃げたんだ。うちには五千万の借金だけ残して。それから……信じられなくなった」
と、保証人になってもらうという典型的な…。
こういうのは安易になってはいけないんだよな。信頼していても。そこらへんの認識が甘いせいで起きたともいえるが……。
しょうがない。
「じゃ、利息なしで借金返すか利息ありで返すほうかどっちがいい?」
「で、できれば利息なしのほうが……」
「わかった」
私はあるところに電話した。
「母さん!」
ある場所から帰ってきて甲地は甲地の母さんのところにいった。
「借金はこれで返せる!」
「あ、あんた……」
甲地の母さんは甲地の頬をビンタする。
甲地の母さんはしくしくと泣いて肩を掴んでゆすっていた。
「どうしたのあんたこんな大金ッ!!!」
といっていた。
まさかまた借金と思うだろうが、これはちゃんと正規ルートから借りたお金だ。それに、あいつなら五千万だなんて少ない金額って言い放ったし……。
あいつ五千万を五百円と思ってないか?
「と、友達から借りたんだよ……」
「五千万を貸してくれる友達がいるかっ!!!」
「いますよ」
私がそういうと、私の後ろからあいつが来た。
そう、みんなご存じ月乃だ。月乃が五千万肩代わりした。しょうがないわねって二つ返事で貸してくれるあたりどんだけだよと思う。
「私が貸しました。あなたの伯父の行方は既に分かったんで貸した五千万+利子は伯父に返してもらうことにするんでいいですよ」
「…………なんで、赤の他人のあんたが……」
甲地の母さんは声を絞り出すかのように聞いた。
「身近なやつが詐欺にあったってあまり好きじゃないんですよ。甲地がパン子の友人だから肩代わりしたんです」
「というわけです。今すぐ返しに行ったらどうです? 借金すぐになくなりますよ」
「でも……」
「五千万ならだまし取られても痛くも痒くもない額ですしどうぞ。借金返すなり持ち逃げするなり」
「痛くも痒くもないっていうあたりホント怖いよお前……」
まじで五千万を何だと思ってる。下手な一軒家買えるぞたぶん。
こいつがもってる全財産を知らないからなー。まじで無限にあるんじゃないかと錯覚してしまうわ。
「あ、ありがとうございます……。このご恩は……」
「いいですって。ま、武宮。あんた明日からまた学校来なさいよ。パン子が余計な苦労するから」
「学校側に説明するの面倒だから自分できて説明してねー。それじゃ」
私たちは帰ることにした。
詐欺、詐欺ねぇ。
「月乃」
「なによ」
「私の借金も返してないよね。ほんとごめん」
「ああ、たしかに貸したっけ。でもいいわよ。友達じゃない。パン子にはよく助けられてもらってるし感謝しかないわよ」
帰り道、そんな会話をしつつ帰っていった。




