高級マンション最上階の住人 ②
高級マンション最上階の住人は広瀬先生だった。
わりとマジでびっくりした。今年一番驚いた気がする。私が驚くことは基本ないとはいえ、広瀬先生がここ住んでるなんて……。
失礼だけどそんなに年収あるのかね?
「そ、その、あはは。驚いた?」
「広瀬先生お金持ちだったんですね……」
「いや、私はしがない公務員だけど旦那がね……。月乃ちゃんのおかげで偉く出世して、月乃ちゃんの家に支援されてここに住んでるって言うか」
「家賃の半分払ってあげてるのよ。運転手だからこそ結構高待遇をしてるのよ」
まあ、月乃の父さん乗せるとなると心労が辛そうだからやめられそうだからな。
この家を脅しに働かせてるのだろう。ただ、たしかに眺めはいいし高い。窓を破ったら落ちるぞこれはよ。
ただ、空調システムはすごく、今めっちゃ快適な温度だ。
「ってなわけで私たち自身は家賃の半分しか払ってないから真ん中ぐらいの人と同じ家賃なんだよね」
「そうなんですか。でも真ん中っていっても」
「四百万が家賃かな」
ってことは本来八百万ぐらいか。
ひいい、家賃で八百万って聞いたことないよ。うちの家は持ち家だったし、今も事故相手がめっちゃ金かけて立て直した建物だし、結構広い。
庭も庭で広く、叔母は今度庭に何か建てるらしい。
「で、今日は何の用かな?」
「先日旦那さんに迷惑かけたじゃない。そのお礼としてきたの。助かったわ。ありがとうございます」
と、月乃が持っていたお礼の品を渡していた。
恐る恐る受け取り、広瀬先生は私たちを見る。
「あけていいかな?」
「どうぞ」
と、広瀬先生が包装を破り、中を取り出した。
中にはとてもいい牛肉の詰め合わせがあって、国産和牛の希少部位とかそんな感じだった。牛肉、しかも国産和牛のいいところだけってめっちゃくちゃ高かっただろうに。
見た広瀬先生も委縮してるよ。いいの?って言わんばかりにこちらを見てくる。
「生ものですから早くお食べくださいね」
「う、うん。わかったよ」
と、急いで冷蔵庫にしまいにいっていた。
「あ、そうだ。みんなこれ食べるかな? 最近できたスイーツ店の菓子なんだけど」
と、持ってきたのはシュークリーム三つ。
よくコンビニで売ってるようなチープなシュークリームの形をしているがこういう形のほうが好きだ。蓋とかという概念もないのでそのまま食べれる。
「中にはイチゴクリームとホイップクリーム、カスタードがあるんだ。うちの友達がそこのパティシエでさ、試作品だっていってもらったのはいいけど食べ切れなくて」
「ならいただきます。私カスタードもらい!」
と、月乃がカスタードに手を伸ばす。
白露はホイップクリームに手を出していた。残りはイチゴクリームか。まあいいんだけどさ。カスタードがよかったなっていう私の気持ちどうにかしてくれ。
「シュークリームって食べると中こぼれるから嫌なんだよな」
「これって食べ方あるの? 私も自慢じゃないけどこぼすわ」
「知らないのか。じゃあ、説明してあげるよ」
私は自分の持ってるシュークリームで説明することにした。
「こう、普通に持つんじゃなくて上だった部分を逆さにして食べるの」
シュークリームを逆さにする。
これだけでこぼれにくくなるのだ。仕組みはある。
「これだけ? 簡単ね」
「なぜそうなる?」
「シュークリームは下のほうが生地薄いから破れやすいの。だからこぼれる。上のほうは生地が厚いし破れにくいから逆さにして食べる方がいいんだよ。テレビでもやってたでしょ」
「テレビ普段見ないからな」
「私はドラマが多いのよ」
なんとなく二人はそうだと思ってた。
「うまっ」
シュークリームを食べての感想はそれだった。
うまい。イチゴの酸味がすごい。それを緩和するかのようにホイップクリームの濃厚さと甘さがイチゴの酸味と調和して程よい感じだ。イチゴも感じるし、ホイップクリームも感じる。美味い。
「美味しいわね。ん、これなら私も通いたいわ」
「普通に美味い」
「ほんと? 友達に伝えとくね。友達もスイーツにたいして猛勉強してやっと開いたみたいだから。今はお客さん少ないらしいけど」
「資金援助でもしようかしらね。気に入ったわ」
「そう簡単に資金援助できるとか金持ちこえー」
私たちはシュークリームを堪能した。




