勝利
気が付くと、血まみれのパビロンを掴んでいた。
「ごめんなさい」と何度もつぶやき、ぽたぽたと血を垂らしている。心がぽっきりと折れている。どうやら無我夢中でフルボッコにしていたらしい。心おるほどひどいことをしていたようだ。
楽しみすぎたからか何したか記憶がない。そういや月乃もこういうことあったな前に。あれと同じか……。
「負けを認める?」
「さっきからみとめへまふ……」
歯が折れ、目が腫れている。
体には無数に穴が開き、むしろこれで生きているっていうのが不思議なくらいだった。
「へ、へきほほろはったんれふ……」
「何言ってるか全然わからん」
頬も腫れているせいか上手く喋れないようだった。
「さて、ま、ここで殺すかどうかだけど……」
「ころふぁはいへふははーい!」
「殺さないでください、ね。命乞い……か。どうしよっかなー?」
私は首根っこを掴んでいるパビロンを揺らしながら、考える仕草をした。
仲間にしてもいいんだけど悪魔ならサルタンがすでにいるしな。サルタンも結構な実力者だし悪魔二人もいらないんだけど。
それに、こいつは罠にハメようとしてきた張本人だ。油断してたとはいえ罠にはまったのがムカつく。
「回復してやるから普通に話してくれ」
私は回復させる。
「あ、ありがとうございます」
「で、こんなことした目的は?」
「えっと、実は私は魔界で公爵という地位を授かっておりまして、そろそろ後継ぎが欲しいなと」
「なるほど、それで合格不合格を」
後継ぎは賢いほうがいいだろうし、優秀なほうがいいだろう。誰だってそう思うさ。
「合格し、候補を魔界に攫い、不合格は殺す予定だった」
「ふうん。で?」
「それだけ、だ」
私は洞窟にパビロンをこすりつける。
「それ以外は本当にない! 後継者候補を探していただけだ!」
「あ、こすりつけたのは単に痛めつけたら面白そうだって言う気分だっただけだから気にしないで」
「ひどい!?」
そろそろこいつの処遇を決めなければいけないだろう。
「で、どうするよ。どうなりたい?」
「……どうなりたい、とは」
「死ぬか、生きる未来を選ぶか。どっちがいい」
「い、生きます。まだ後継者が見つかっておらぬのです!」
「そう。じゃあ、さっき逃げた子の仲間になるってのはどう?」
「さっきの……」
「そ。あいつらにとっても悪い話じゃないだろうし、あんたがいるなら私と張り合えるんじゃないかな」
「はい! そうさせていただきます!」
ビシッと敬礼を決めていた。
そして、私はちょっと笑ってしまい、それをごまかすように先へ行こうと促したのだった。
「だけどまぁ、裏切ったら今度こそ殺すから」
「裏切りません!」




