要注意人物の一人?
どうやらこのダンジョンは階層によってギミックが違うらしく、階段を上がった先には木々が生い茂っていた。
私一人で歩いて探索しているが、木々が密集するジャングル。少しばかり動きづらい。
「ったく、なんでこのタイミングでログアウトするかねえ」
ビャクロは親に怒られそうって言ってログアウト、ワグマはこれから用事があるらしく、タケミカヅチは子供の夕飯を作るんだとか。
用事がないのは私だけで、私一人で探索していた。
「ったく、魔物が少々いる程度じゃんかよ」
私は襲い掛かってくるチーターに触れ凍らせる。
カチンコチンになったチーターは地面に落ちてそのまま砕け散った。私のDPとなったところで、私の目の前に影が覆いかぶさる。
どうやら他のプレイヤーだった。
「あ、どう」
挨拶しようとすると、相手が四人とも剣を構える。
いきなりの臨戦態勢に私は戸惑いを隠せないが、私は立ちあがって四人組のプレイヤーの顔を見る。男子高校生のようだ。友達たちと一緒にやることにしたって感じの。
なぜ警戒されてるかはわからないが……。やるならやるぞ。
「俺が時間を稼ぐから、お前らは逃げろ!」
「逃げる?」
と、剣で攻撃してくる二人。
そのうちの二人は後ろに向かって逃げ出していった。私はナイフを眉間めがけて投げると、男一人の眉間にナイフが刺さった。
男はよろけたが、死ぬことはなかった。弱点にクリティカルヒットしたのに死なないとかどんな体力してんの?
「ありゃりゃ。仕留めそこなった?」
「ぴ、ピンポイントで狙ってきやがった……」
ナイフを引っこ抜き、私に向かって剣を構える。
私には対峙される理由が分からない。なぜそこまで警戒されるかもわからない。だからこそ、不快なのだ。そりゃ、襲い掛かってくるならばやり返すけど、基本私はやられないとやり返さないのだ。
こうも警戒されたら誰だって不快だと思うよ。まあ、私がやってきたことがやってきたことだから自業自得といえばそれまでだけど。
「なんでそこまで私を警戒するの? なんもしてないでしょ」
「あんた、要注意人物の一人なんだよ! あったら終わりだって言われてるんだぜ!」
男子一人が攻撃を仕掛けてくる。
まじで? こんな安心な人他にいないでしょうが! 要注意人物の一人ってなんだよ。おい、詳しく聞かせろ。私みたいな天使な人いないだろうが。
私はとりあえずどさくさに紛れて二人に触る。そして、凍らせた。
「う、動けんっ……!」
「ちょっと攻撃やめてね。私別に殺したいわけじゃないからさ」
「……え?」
「やられたら倍返しが私ってだけでなにもしなかったら基本しないよ」
そういうと、男子たちは困った顔をしていた。いまいち信用できないって感じだろうな。
「いや、まあ、嫌がらせとかはするし妨害工作はするけどPKまではさすがにしないからね」
「だ、だが、噂じゃ人をすぐ殺すPKだって……」
「噂を鵜呑身にする時点でバカ丸出しだろ。何が本当で何が嘘か見抜けないとダメでしょうが」
私は凍結状態を解いてあげると、地面に座りこむ二人。
私はその二人を置いて、先へ進むことにしたのだが。その二人が後ろを追いかけてくる。
「ご、ごめん! 悪かった! お、お詫びといっちゃなんだがここのエリア案内させてくれ」
「まじで? いいの?」
「あ、ああ。俺らは探索終わったし魔物の巣とかも見つけたから……」
「まじで? ありがと。じゃ、君たち私の前歩いてね」
「わかった。後ろから狙わないでくれよ」
「わかってる」
私は案内してくれるって言うんでとりあえずついていくことにした。




