王子の個人的な頼み
司書室に移動すると、王子はこほんとため息をついた。
「それで、話しとは?」
「頼みがある」
頼み?
王子は、苦虫を嚙み潰したような顔をした。
「その、近々公爵家令嬢がこちらにくるだろう。助けてやって欲しい」
「……は?」
「いいやつなんだ。だからこそ、魔王軍でかくまってほしい……。それだけだ」
王子が頭を下げた。
近々公爵系令嬢がこちらにくるとはなんでだろうか。匿ってほしい? 王子は何を言っている?
もしかして、婚約破棄されるからだろうか。公爵家令嬢が婚約破棄されて、失意の元、こちらにくるといっているの?
「今の俺の国は正しい奴が糾弾される悪しき国と化している……。一人の悪女が俺に取り入ろうとしているし、宰相の息子や騎士の息子はすでに陥落済みで……。一人の男爵家令嬢が力をつけている。公爵家令嬢を貶めようとしているのだ」
「乙女ゲームかよ」
「おと……?」
「こっちの話。要するに公爵家令嬢を助けろということ?」
「そうだ。あいつが帰ってくるまで俺はあの国を変える。それまで匿っていて欲しい」
と、頭を下げた。
恋人の為に頭を下げる。いいやつなんだろうな。断る理由はないから別にいいけど。
「まあいいですよ。それに、男爵家令嬢ごときにそんな風になる国もう終わらせなよ。なんなら魔王軍が手を貸すよ?」
「それだと民衆が困るだろう……。それに、正しい奴が糾弾されるのは民衆のせいではなく宗教のせいだ」
「あぁ……」
「私はこの国を変える。アバロン教は絶対になくす。あいつが笑って過ごせる国を作る予定だ。だからこそ、国を変えた暁には貴殿と本当の友好条約を結びたい。いいだろうか」
「いいよ。そんなまっすぐな目をしてるしね。それに……公爵家令嬢って言いながらも本当はスパイだ……とかいうならただじゃ済ませないけどね」
「気にするな。本当に公爵家令嬢であって運動は不得意……ドジだ」
「……それもそれで少し困りそうだけど」
「頭は悪くないんだ。たたドジなだけで……。よく転ぶんだ」
すねこすりかなんかに憑りつかれてんのか?
でも……顔を赤らめながらも公爵家令嬢のことを話している。本当に好きなんだとわかるな。くっ。リア充爆発しろ。爆発させてやろうか?
「転んで、少し涙目になりながらも痛みを必死に我慢するその姿がとても可愛いんだ……。保護したくなる。愛玩動物みたいにキュートなんだ」
「よくわかりました。ただただ好きな人を語るって結構キモイな……」
「ひどいな……。だが、まあよろしく頼む。なんで裏切られたか、そう失意の元にこちらを訪ねてくると思う。俺の思惑とか話してくれていいから……とにかく頼んだ」
王子は頭を下げた。
そして数日後。本当に来た。




