国造りに必要なもの
ログインすると、そこは大きな森の中だった。
木が鬱蒼と生い茂っている。ただ、不思議なのは道が整備されているということだ。一応人はいるらしい。こんなきれいな道があるということは人がいる証拠だろう。
それはさておき、月乃たちと合流しなくちゃな。
「ひとまずステータス確認しておくか」
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ネーム:パンドラ 種族:ダークエルフ
HP:23/23 MP:60/60
スキル:ファイアボール(火属性魔法) アクアボール(水属性魔法) ウインドボール(風属性魔法) アースボール(土属性魔法) ダークボール、ダークファイア(闇属性魔法) 貫きの矢 拡散の矢 一点集中の矢
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え、これだけ?
てっきりちからとかそういうステータスがあると思ったけど……ないのか。
うーん。いまいちわからないな。どういう仕組みなのかはさっぱりだ。でも、さすがエルフというだけあり魔法の種類が多い。闇に関しては二個使えるし。
「それにしても月乃どこだ?」
と、探そうとすると、おーいと声をかけられる。
後ろを見ると、背中に蝙蝠みたいな羽が生えた白い髪の女性と悪魔の羽根を生やした金髪の女性がいた。え、誰だ。
気安く声をかけてくるのは……。
「もしかして月乃と白露?」
「そう! っていうか幼女体型! ロリコンかしら?」
「それも少しある」
「というか、今私は白露じゃない。ビャクロだ」
「私はワグマね。種族は魔族」
「私は吸血鬼を選んだぞ。パン子は?」
「名前はパンドラ。種族はダークエルフ」
「うわぁ、好きそう」
好きですけど何か?
「よし、この三人で国造りするわよ。そのためには、まずデカい土地を用意しないとね?」
「開拓?」
「するしかないじゃない? ちょうどいいところに森があるんだしこれを切り拓けばいいでしょ?」
「……無茶言うな」
そもそも自らの手で開拓するっていうのがおかしいだろう。
手軽なのだったらまだある。
「手軽にやるならどっかの王を殺して自分が玉座に座るというほうが手っ取り早いと思うけど……」
「え、非道……」
「さすがにそれはダメだろう」
二人は反対のようだ。でも一番手っ取り早いのがそれなんだから殺して乗っ取りたいが。
「え、ダメなの? 一番手っ取り早いけど」
「だってさすがに人殺しは躊躇うでしょ?」
「いや、魔王になるっていうぐらいだから寧ろ人殺し上等っていうほうが普通だと思うけど」
「なんでそんな魔王に偏見持ってるのよ。いい魔王だっているはずだわ」
いや、そうだと思うけどさぁ。
ほら、ドラゴンクエ〇トの魔王とか自分勝手だしむしろそっちのイメージのほうが強いというか。
「ワグマの魔王像ってなんなんだよ……」
「悪いことをしてないのに悪だと決めつけられて討伐されそうになってるやつ」
「うわぁ、ワグマっぽい」
ワグマそういうの好きだもんな。人間側がクズっていうのがワグマの好みだ。
「ともかく、人殺しはダメよ。自らの手で森を切り開くの」
「……わかったけどさ、森だって一応国の所有物で、そこに勝手に国を作りましたってことじゃ、国との戦いは免れないと思うけど」
「……それもそうね」
「国を作りたいなら人殺しは避けて通れないと思うけど」
「は、話し合いで解決しない?」
「話し合いで領土はいどうぞっていってくれる人はいないと思うよ」
「うぐぐ……」
え、まさかこういう問題に気づいてなかったのか?
ワグマは納得がいってないような顔をしていた。白露は納得したのか既に黙っている。物分かりはいいんだがな…。
「手っ取り早い方法はないのか?」
「あるにはある」
「ど、どんな!?」
「二つ。まず一つ目は言った通り王を殺して……」
「それはだめよ!」
ですよね。
「じゃあもう一つは?」
「正攻法だし、まだいるかどうかわからないけど……貴族になって独立する」
「それっぽい!」
「ただ、貴族がいるかは知らないし、いたとしてもなるのが難しい。それに、もらえる領土は結構狭いと思うよ」
「広げてけばいいのよ。広げてけば」
「どうやって?」
「そ、それは……」
国を作ろうとする以上、戦いは避けて通れない。
人殺しを躊躇するくらいでは為政者は務まらないと思うんだ。時に冷徹になることも必要だしね。
「まぁ、どちらにせよ、国が独立するのは許してもらえないと思うし戦いになるのは決まってるよ。人殺しとかしたくないんなら魔王になれない。どうする?」
「……するわよ」
「もっかい」
「人殺しもするわよ! 魔王になるのが私の夢だもの!」
「わかった。魔王様」
ワグマも人を殺す覚悟は決めたらしい。方針は決まった。