人間国の言い分
謁見の間に入るとワグマがすでに席に座っており、その隣にはすでにビャクロが立って、目の前には金髪の髪の男性がいた。
この人絶対王族だな?
「パンドラ。自己紹介を」
「え? あ、うん。私はパンドラ。えっと……司書室の司書を務めております」
これでいいのか?
というか司書如きがこういう会合に参加していいのかも疑問だけど。
「それで? あなたたちは私たちに何を訴えに来たの? 領土を返せといいたいの?」
「そういうわけではない。友好条約を結ぼうとしてきたのだ」
胡散臭い。
あの余裕な笑みはこちらを侮っているように見える。一介の魔王など相手にもならんだろうと思っていそうだ。
だが甘い。
「魔王様。発言よろしいでしょうか」
「許可する」
「では…。友好条約を決めるにあたって、条件は私たちが決めてもよろしいでしょう?」
「許可するわけがないだろう?」
「なら無理です。あなた方はきっと、『この魔王領も認めてやるから税収を治めろ』とでも言いに来たんでしょ?」
「なっ……」
読み通り。
魔王領を認めてやるから税を治めろといいにきたんだ。適当なあてずっぽうだったんだけど。
でも、あちらがわにも弁えている人はいるらしい。交戦するのは得策じゃないからね。こっちも被害甚大になるけどあちら側も被害がひどくなる。
だからこそ認めてやるといいに来たんだろう。
「残念だけどそれは不可能ですよ。私たちはもう独立国家。あなた方の領土なんて私たちには関係ありませんから」
「何を言う。もともとはここは私たちの国の一部だったのだ。国の一部なのは当たり前だろう」
「それは人間側の都合でしょ? 私たちには関係ない」
人間が勝手に国の一部だと名乗っているだけだ。
私たちには関係のないことだ。
「目論見が外れましたね。魔王領として認めれば、税収ももらえるわ、魔の森からの魔物侵攻も防げるわで一石二鳥だったんでしょうけど」
「え、そうなのか?」
「そう簡単に魔王を口説き落とせると思うなよ。もうちょい腹芸上手くなってから出直してこい」
そういって睨むと王子は帰るといって謁見の間からでていこうとした。
私はそれを引き留める。
「一つ言いたいことがあります」
「な、なんだ?」
「先ほど、人間が私を襲ってきました」
「なっ……!」
「いいように言えば宣戦布告とも思えます。本当に私たちと戦いますか?」
「……くっ。わかった。だが、待ってほしい。二人で話をさせてくれ」
「……はい?」
二人で?
何か意図がある? 私は、鑑定するように王子をじろじろ見ると、王子は頼むといわんばかりの目をしていた。
それは魔族に向けられる目ではない。むしろ、仲間を見る目に思えた。
「わかりました。王子と二人きりなら話をしましょうか」
「なっ、王子!」
「気にするな。こちらから手を出さなければいい話だ」
よくわかってる。
私は王子を連れて、司書室に向かったのだった。




