天才だった子の苦悩
幽霊屋敷に住み始めて二日目。
アップルと話をしていた。アップルの昔話を聞いている。
「あの王子様ね、私という婚約者があろうというのに他の子に恋してたのよ。あろうことか私を邪険に扱うならまだしも、殴る、蹴るなどの暴行をしてきたわ。お前が私より優秀なせいで…ってね」
逆恨みか。
そういった恨みでDVをするのは聞いていても心地いい気がしない。それで恨むのは至極当然のことだと思うのだ。
「それに父上も王子の心を射止められていないことに激昂して食事を抜かれるなどのこともされたわ」
「へぇ……」
「私って天才だったからいけないのよ。本を一度見ただけで忘れない体質だったから」
天才には天才の苦悩があるということか。
才能がゆえに逆恨みを起こされ、自分の父親からも恨みを買い、放棄されてしまった。そんな彼女は誰も恨まないというならばそれはもう聖人であろう。
私がもし彼女ならば、自分の境遇を恨み、周りを恨んでいる。
「あなたもあなたの周りにも気を付けるように言いなさい。過ぎた才能は恨みを買うってね」
「肝に銘じておくよ」
私の場合は有無を言わせないけどな。
恨んで何かされる前にこちらが動く。何かあってからでは遅いからな。私は結構な人の恨みを買ってるだろうし、なにかされることもあるだろうに。
それに、カイハも、ビャクロも。人生一筋縄ではいっていない。カイハもビャクロもどこかしらでは嫉妬されたり恨まれたりしている。
「ま、今は復讐も果たしたし別に恨みもないし幽霊ライフを楽しんでるけどね」
「すごく楽しそうだもんな」
「最高よ? まず疲れないもの。ふわふわ浮いてるだけってあんたもだけど」
「これはまあスキルの関係だから」
「それに、壁すり抜けも余裕よ? しがらみがないっていうのがいいわね」
自由にやれるっていうことか。それはそれで羨ましい。
私だって自由にやれたら……。物理的でも精神的でも。このゲームを掌握し一気にディストピアに……。やれないか。さすがに無理だ。
悪役になった以上、悪事を働きたいもんだけどなー。意外と私も悪事働けないもんだなー。善人っていうことかな? うん、きっとそうだ。心の奥底にある優しさがね……邪魔するんですよ……。
「でも気になったんだけど父にしか復讐はしてなかったんでしょ? なんで王子にはしなかったの?」
「そうなのよね。しようと思ったんだけど……できなかったのよ」
「できなかった?」
「なんていうか、あの私を殴ってきた王子様って偽物って感じがして、しようと王城に忍び込んだんだけど……。邪悪な気配を感じたっていうか。もしかしたらその邪悪な気配が王子を操って……」
「……ふぅん」
「私に暴力を振るったとは思わないほどいい政治をしていたし、まっとうに過ごしていたからこそ、不思議なのよね。私に暴力を振るったっていうのが」
「でも王族は嫌いでしょ?」
「まあね。どんな理由があれ私をここまで追いつめたんだもの。謝罪があったら許してあげなくもなかったのに」
ちょっと調べてみるか。
その邪悪な気配。




