少し騒がれた
街が一つ消えたことは、翌日の学校で持ちきりだった。
「なぁ、あの街が消えた事件、あれ三人のプレイヤーが興した事件らしいぜ」
「まじかよ」
「しかも女性らしい。ぶっ壊れた人だって言っていた」
ぶっ壊れたって……。
そりゃゲームだもん。現実の自分をぶっ壊してプレイしてるだけなんだけど。というか、頭のねじを進んで外しただけだよ。
ゲームは楽しんでなんぼ。
「やっぱり話題強いのかしら」
「世に出回って数日しか経ってないんだよ。それなのに街が一つ消えたってそりゃ話題になるよ」
「そうなのね……」
ワグマががっくしとしていた。
「魔王とか名乗ってたけど……誰なんだろう」
「……自己紹介してあげたら魔王様」
「からかわないで」
それにしても髪と目の色変えただけで私たちって気づかれないもんだなぁ。あの中にいたプレイヤー、その一人がクラスメイトにいたのは少し驚いたけど。
その一人は私と目が合うと、視線をそらした。見つめすぎただろうか。彼は少し照れている。
「はーい、授業始めるから席についてー」
先生が教室に入ってきて、そのゲームの話はなくなった。
何となく気になってエゴサ? していると、やはりネットでも話題になった。
まとめ板では必死に犯人捜しをしている。プレイヤー名をさらして危険人物だとかいって指名手配されるんだろうか。
まぁ、顔は見られたけど名前……名乗ったっけ。それ忘れたけどそう簡単に捕まるわけはない。私たちを相手したいんなら、あの森の賢者たちを倒さなくちゃいけないからね。
ふははは! レベルマックスならまだしも、今はみんな低レベルだ! 今の実力じゃ私は一人とて敵わない相手にそんなやつらが敵うわけがない。
そもそも、ゲームに倫理観を求めている時点で負けなんだよ? 勝つにはなんでもしなくちゃいけないんだから。
「怪しいプレイヤーネームの中に私混じってる」
スマホをスワイプしていくと、怪しいプレイヤーネーム一覧というものがあった。
私はパンドラという名前だけで入れられたらしい。なんで知られているかというと、この前街にいったときに偶然鑑定? されていたらしい。
運ってすごい。正解だもの。
「しばらく何もしないほうがよさそうだけど、ワグマの名前を広めたほうが魔王だと認知して……。でも討伐しようと躍起になってうるさいかもしれないなぁ」
きっと正義のヒーロー(笑)たちが黙ってないし、偽善者ぶる奴らも黙っていないだろう。
正義のヒーローなんていないのにさぁ。
「クックック……。でもまぁ、人間側も馬鹿じゃないでしょ。勇者さん。早く現れて頂戴よ」
魔王がいるならば、勇者になりたい奴って、きっといるはずなのだ。




