災厄は刹那のごとし ②
私は弓を構えて、目の前のプレイヤーたちを見る。
「手引きしたのはお前らか?」
「そうだとしたら?」
「……なんでこんなことをする。ゲームだからってやっていいことと悪いことが」
「このゲームはなんでもあり。なんでもありだからしたまでだよ。別に何も悪いことしてるわけじゃない」
三人かと思っていた。けど、後ろに数人控えめいる。十人は軽くいるだろうか。十人……いや、二十人。ものすごく多いプレイヤーが私たちを囲んでいる。
少々分が悪い。
「私たちは別にいいことをするプレイをするわけじゃない。私は、私たちは絶望が好きなだけだよ」
「ぱ、パンドラ?」
「人々が絶望に怯え、叫ぶ顔……。それって……さいっこうのエンターテインメントでしょ?」
「く、狂ってるぞ……」
狂ってる。そうかもしれない。
私は、こういうことをすることは躊躇いはない。善悪の感情なんて持ってないのかもしれない。ただただ、楽しいから。誰かのためだなんてばかばかしい。自分の人生は自分のために生きるって決めている。
「で、君たちは私たちを殺すの?」
「当たり前だ! お前らをのうのうと生かしておけるか!」
「へぇ。私たちもプレイヤーだから生き返るけどね。それはおいておいてと」
私は、プレイヤーたちを見据える。
「もう、軽口は終わり? 勝負始める?」
「ああ。はじめよう!」
プレイヤーの一人が切りかかってくる。
私はそれを避けて、建物の上からワグマとビャクロを引っ張って飛び降りた。結構な高さからの紐なしバンジー。ワグマは悲鳴を上げながら落ちていく。ビャクロは地面をしっかりと見ていた。
「なにするのよ!? なんで飛び降りたの!?」
「少々分が悪い。あのままじゃ死ぬよ。デスペナルティはさすがに回避したいからね」
カルマ値がものすごくたまっているはずだからそれ相応のデスペナルティがあるだろう。
「でもこのままだと落下死するわよ!?」
「いや、しないよ」
すると、私たちの下に竜が割り込んできた。森竜だ。森竜が私たちを助けてくれたのだった。地面に激突することなく、森竜の背にまたがる。
『さすがに分が悪かったか魔王様』
「集団リンチはひどいよね」
『まったくだ』
私は弓を構える。
毒を矢じりに塗って、そのまま建物の上に森竜に行ってもらう。建物の上には茫然と私たちを見るプレイヤー。私は、弓矢を放った。
「ふははははは! お前ら遠距離攻撃無理そうだなぁ! こっちは遠慮なく遠距離攻撃させてもらうからねえ!」
「て、撤退!」
そうはさせるか。
すると、突然建物が崩れ落ちる。下を見ると、エルフと悪魔が魔法を放ってこの建物を破壊したらしい。ガラガラと崩れていく建物。瓦礫の中に落ちていくプレイヤーたちの姿が目に移った。
プレイヤーたちは落下し、瓦礫の下敷きになり、次々と死んでいく。勇敢なプレイヤーが死んでいき、他のプレイヤーは逃げ惑っている。
「……災厄だわ」
「そう? まだ死なせるだけありがたいでしょ」
「……パンドラはもっとえげつないことをするからな」
「まぁね」
例えば瀕死の状態にしておいて回復させてからまた瀕死にするとか。死んだほうが楽だっていう気持ちにさせるのが私の個人的な好みかな。
「パンドラって結構というか、壊れてるわ……」
「現実では優しいんだけどな」
現実とゲームは別。ゲームはとことん楽しむだけ。
主人公は結構なサディスティックです。




