魔王軍のハーヴェスト ④
私は水を体にまとう。
「ぱああああ!」
「うっせえ! 甲高い声で咆えるんじゃねえ!」
水の刃を出すも、カボチャの皮……鱗? よくわかんねえけど、滅茶苦茶堅い。こりゃ一筋縄じゃいかないな。こういうマジのやり取りは苦手なんだけれどよォ。
私は本来策を弄して待ち構えて戦うっていうのが得意なんだ。こういう思いっきり即興勝負は苦手なんだよォ。
「アドリブでもなんとかいけるけど本来の強さじゃないんだよな。本領発揮じゃなくて博打要素も含むし」
「おい、負けるんじゃねえぞ! 俺様が対峙したらもう死ぬしか未来がないからな!」
「わかってるよ!」
あのかぼちゃの皮をむかない限り攻撃は通らない。
煮たら柔らかくなるけど、熱湯は私は出せない。どうする?
「まずい! ブレスが来るぜ!」
「バリアー!」
どうすればいいんだ?
「ま、こういう時はビャクロみたいな考えでいっか」
考えるのがめんどくさくなってきた。
ならばこうさせてもらう。
「とりあえず力押し!」
力技でなんとかならなければその時考えればいいだろう。
少なくとも、小細工が通用する相手じゃなさそうだ。あの鱗に傷すらつかない辺り、まじで堅いからな。並大抵の剣じゃ剣のほうが負ける。
全身カボチャって案外怖いもんだな……。
「カイハ! 火をつけれる発明とかあるか? もしくは激しく熱をもつもん!」
「この機械リュックのシステムが誤作動を起こせば熱を持つが……どうするつもりだ?」
「ぶっ壊す!」
「はあ!?」
「非常事態だ! やってくれ!」
「わあったよ! わざと誤作動を起こさせてやる!」
カイハは機械リュックを少し弄っている。
すると、どんどんヒートアップしていってるのがわかる。熱くなっている。鉄を熱したら赤くなるように赤くなっている。
「あちい! もう限界だぜ!もてねえ!」
「グレート!」
「これをどうすんだよ!? 放っておいたら火事になるぜ!?」
「問題ねえ!」
私は布越しにその機械リュックを持った。私の体に触れないように機械リュックをカボチャゴンの目の前にぶん投げる。
布が焼き焦げたが、リュックは一直線にカボチャゴンへと向かっていった。そして、私はでかい水の玉を放つ。
「おい離れてろカイハ! じゃないと死ぬぞ!」
「は?」
「あんだけデカい水の玉にすごく発熱したリュックを投げたんだ。あることを強制的に起こす」
そして、その瞬間、デカい爆発が起きたのだった。
「うっひゃああああ!?」
「すっごい威力! というか、発熱すげえな!? あんなもんをよく背負ってたな!?」
「あれは滅多なことじゃ誤作動を起こさねえし機能を詰め込みすぎてるから発熱も段違いなんだよ! 物理衝撃にもきっちり耐えるし防水性もばっちり、熱にも強く衝撃も吸収する高機能な代物だからなぁ!」
「それはすごいけど!」
「だが発熱したらひとたまりもねえ! ひどけりゃ溶岩みたいな温度になるぜ! 誤作動を起こし始めたら普通はすぐ脱ぎ捨てぶっ壊すんだ! 今まで壊れたことがなかったけどよ!」
「壊すって壊しても爆発するんじゃないの!?」
「核をぶっ壊したら発熱もしなくなるんだよ! だから俺様の発明は安心で安全なんだ! だが……」
カボチャゴンのほうを見てみると黒い煙が上がり、ところどころ焼き焦げている。
水蒸気爆発はすげえ威力だ。申し分ないが……。もうやれないな。
「ぱあああ……!」
「今ので体力を相当持ってかれてるみたいってことは、お前体力そんなねえな?」
「ぱあ!」
「まだあきらめてないな。その方が好都合だ。逃げられたら困るからな」
「俺様のリュックがぁ……」
「さ、まだケリはついてないぞ。さっさとお前をぶち殺してかぼちゃを持って帰るぜ」
私はまた再び水の刃を飛ばした。




