災厄は刹那のごとし ①
平和な街。だが、その平和は突然崩れ去ることになった。
門の前の見張りの兵士。もちろん魔の森近くなので屈強が揃っている。その兵士が、九人と一匹の姿を確認した。それは、森の賢者と呼ばれる七体の魔物の姿。
「な、なな、なんだあれは!? なんで賢者どもが七人そろって……!」
「な、なにぼさっとしている! 避難警告を直ちに発令! 住民を避難! 冒険者ギルドの冒険者を集め総力で挑むぞ!」
「か、かしこまり!」
兵士の一人は、冒険者ギルドにまで足を運んだ。
そして、門の前には数人の兵士が。門の見張り担当だった兵士たちが、剣を構えてパンドラたちを睨む。射貫くような殺気を向けるが、魔物たちはそれで怯むことはなかった。
そして、背後に一人の少女が空から降りたつ。
「貴様らの血は……美味いのか?」
「ひいっ!?」
パライゾに首根っこを掴まれる。恐怖で足が震え、剣を落とす。そして、二人の兵士は首を思い切り切られたのだった。
首が、地面に転がる。なかなかにエグイ光景だった。
「街の中に侵攻! この街を支配せよ!」
ワグマの号令が飛ぶと、森竜とパライゾは空を飛び、門を超す。
パンドラたちは、門から堂々と中に入っていった。
街の中は、阿鼻叫喚の嵐だった。
森竜の口からブレスが放たれ、少女や女性、老齢の人などが走って逃げている。パライゾが捕まえ、首を斬り、魔女は変な薬をかけて、人間を異形化させていた。
デュラハンは剣で薙ぎ払い、冒険者の相手をしている。リッチーはというと、アンデッドを召還したり、死んだ死体を動かしバイオハザードのようにゾンビどもを徘徊させていた。
もはや、もう街はつぶれたのと同義だ。
「さすが森の賢者たち。魔王様が手を出す必要はなかったですねぇ」
「でもやりすぎよ……。なかなかにエグイ光景が広がってるわ」
「まぁ、悪に落ちると決めたんなら最後まで貫き通さないとな」
「悪の魔王になるつもりはないんだけどね……。でも、もう遅いわ……」
パンドラたちは建物の屋上で真下に広がる惨禍をただただ眺めていた。
この街には彼女たち以外にプレイヤーがいないわけではない。他のプレイヤーは、なんでこんなことが起きたのかわかっていない。だがしかし、三人のプレイヤーがパンドラがいる屋上に姿を現した。
「どうやら私たちにお客さんのようだよ」
「やるしかないのよね……」
「だな」
パンドラたちは、それぞれの武器を構えるのだった。
災害は、災厄はまだ始まったばかりだった。




