裏切り者の末路
私は今、危機的状況になっていた。
「わ、私が悪かったからそろそろ許してくれない……?」
「裏切り者の言葉なんか知らないわよ」
「そうだな」
ワグマとビャクロが私の謝罪の言葉を聞きもしようとしていなかった。
いや、言わなかったのは悪かったと思ってるけどさ……。言わなかったのにはちゃんとしたわけがあるんだって。
「言わなかったは悪かったけど理由を聞いてほしいんだ」
「理由?」
「……どんな理由だ」
私は胸倉を掴まれながら必死に答えるのだった。
「裏切り者! 真の裏切り者がいるんだよ!」
「「はぁ??」」
と、二人は私を睨んでくる。うっ、自分のしたこととは言え……。
「苦し紛れの言い訳……なわけないものね」
「誰だ? 言え」
「わかったよ……。じゃ、言うけどあの会議でこっちにつっかかってきた男いるでしょ? あいつ」
「……あいつ?」
「わかった。呼んでみるわね」
「いや、もう逃げだしてるころでしょ。負けちゃったし」
だからこそ、私は既にトラップを仕掛けている。
いきなり魔王の部屋の扉が開かれレブルが入ってきた。そして「ユウマさんを捕らえました!」と意気揚々にかかげてくる。状態異常の気絶状態になっていた。
バーカ。そう簡単に逃げれると思うなよ。
「計画していたときには確証はなかったんだけどね。でも、ついに確証を得たんだよこの前」
「いいから起こしましょう」
ワグマがぺちぺちとアバターの頬をたたくと、気絶状態がちょうど終わったのか目を覚ました。そして、今の状況に気が付き、一歩身を引いて、扉を開けようとしていたので、ビャクロがそれを防いでいた。
「おはよう裏切り者くん。逃げるのに失敗した気持ちはどうだい?」
「な、なんのことだ? 裏切り者?」
「この状況でもとぼける、ねぇ。私の目の前でとぼけるっていい度胸してるよね。じゃ、君が裏切り者っていう前提で話しを進めてくけど……」
「まて! どうして俺が裏切ってるって断言できる! 俺は裏切ってなど……!」
「じゃ、なんでエルピスが攻めるってことをエヴァン帝国に流したの?」
「は?」
今でもとぼけているけどもう無理だよ。
私には確証がある。ちゃんとね。
「私はね、直接的にエヴァン帝国に情報を流したわけじゃない。ただうっかり計画書を落としただけなんだ。君の前でね」
「……は?」
「うっかり落とした計画書にはきちんと攻める日時も書いてあったはずだよ。その通りに来たってことは誰かがその計画書の情報を喋ったんだけど……その計画書って私しか持ってなかったんだ」
「…………」
男が無言になった。
きっと心当たりがあるんだろう。そして、わなわなと震えだした。
「その拾われた計画書は多分棄てられたんだろうけどさ……。でも、攻める日時は私しか実は知らなかったんだよね。ユウナたちには事前に言わなかったんだ。でも、相手はなんでわかったのかな?」
「そうか。知っていたからだな」
「計画書を読めば簡単にわかる……。落としてしまったものを読めば日時が分かるというわけね」
「そう。で、私は計画書を君の前にしか落としていない。もう、わかるでしょ?」
私がそういうと、男は剣を握った。
「な、なんで俺が裏切り者だってわかったんだ。俺の前でわざと落とすような真似をして……!」
「もちろん、私は最初から君を狙い撃ちにするつもりだったからだよ」
「えっ」
「あの会議の時、頑なに私を参加させようとしてなかったからね。もちろん、ぽっと出だからってのもあるけど、なんだか違う意図を感じたんだ。参加させたくないからって。君は、多分私のことを知ってるからこそ、参加させたくなかったんだもんね?」
事実、参加しないと怒るふりをしていたら安堵していた表情を見た。
その時にもしやとは思っていた。
「だからこそ、エルピスを作ろうと決心したわけなんだけどさ。ワグマ、ビャクロ。これで許してよ」
「そうね。パンドラは許すわ」
ワグマとビャクロはユウマのほうを向く。
「裏切った代償はでかくつくわよ……? とりあえず死ねないように牢獄にでもいれておきましょう」
「そうだな」
ビャクロはユウマを引っ張っていったのだった。
ふう、本当の裏切り者を糾弾したことで許してもらえたぜ……。




