疑心暗鬼に陥った
リッチーのエディットを呼び出し、私は早速尋ねることにした。
「エディット。エルピスっていう組織、知ってるかしら」
「……はて? エルピスとはなんでしょう」
「とぼけるつもり?」
「本当に知らないんですって」
本当かどうかはわからない。
噓発見器なんていう便利なものもなければ、パンドラという輩もいない。私が嘘かどうかを判断する。正直やりたくない。
私は、こういう駆け引きは苦手なのだ。
「知らないところを見るに本当にかかわりがないんじゃないか?」
「でも、アンデッドを召還できるのは、エディットくらいよ」
「アンデッドを召還……? あのニホン兵の中にアンデッドの気配があったのはもしやアンデッドが混じっていたというわけですか?」
「そうよ。というか、大半がアンデッドだったわ」
「なるほど。だから私に疑いが向いたのですね。アンデッドを召還できるとなる以上、リッチーである私が疑われるのは当然ですね」
特に焦った様子もなく、ただお茶を飲んでいた。
焦る様子がない、余裕がある。私の勘だけれども、こいつは多分クロだ。でも、何かを隠している。どういうことだろう。
考えれば考えるほどわからなくなってくる。
「そうですね。認めましょう。エルピスの一員は私です」
「なっ……!」
「意外とあっさり認めるんだな?」
「ええ。あなた方はどうにかなるとしても、あのパンドラさんにはすぐにばれそうですからね」
それはわかる気がする。
パンドラはきっとすぐに真相に近づくはずなのだ。嘘やごまかしは多分通じない。だからこそ、敵に回したくもない。
「我らがリーダーは魔王の首を狙っておりますので、ご注意くださいね。では」
と、エディットが走って逃げていった。
やばい! 逃がした! すっかり油断していた。生かしてはおけない。裏切り者は許しておけるはずがない。
すぐに姿が見えなくなり、ビャクロも追うのは無理だと諦める。
「なによもう……。リーダーが首を狙ってるって……」
「みんなそうでもして魔王を討ち取った名声が欲しいのか?」
「……エルピスに関しては多分違うと思うわ」
頭の中で考えてみる。
仮にも裏の組織が名声を欲しがるわけがない。表舞台に立つことになるだろうし、裏の組織とは死んでも言えなくなるだろう。
となると、魔王の首を狙う理由は?
「……自分が魔王の座に就くため?」
私の首を狙う、ということは自分が魔王になると言いたいようなものだった。
となると……。
「リーダーも身内の可能性が十分あるわよね」
というか、十中八九身内だろう。
賢者たちか、レブルか、アンジュか、エクスかイルマなどなど。全員が全員容疑者というわけだ。なにこの疑心暗鬼のゲーム……。早く終わらせてほしいわよ。
私はそう願うばかりだった。




