パン子の秘密のせいで
人が嫌いかといえばそうでもない。
人が好きかといえばそうでもない。
そう答えるのが私の友人のパンドラ……基い、パン子だ。
心がない……というより、心は既に壊れている。だからこそ、非道な作戦を思いつくのだろうか。私が頼んでおいて文句は言えないけど。
人としての心を失ったのはやっぱり昔の出来事がいけなかったんだろう。人を信用しなくなったというのが正しいのかもしれない。けど、根が優しいのかしらないが、善人だ。
「私なんかよりパンドラのほうが魔王にふさわしいよなぁ」
思わずそうつぶやくと隣にいたパン子にもそれは聞こえていて。
パン子はこちらをみて無気力な目を向けてくる。感情が読めない。パン子は、昔にあることがあって感情で行動するのを辞め、感情を顔に出すことはほとんどなくなった。笑うのだって本当にたまに。
この無感情な目が、顔が私には少し怖かった。
「何言ってるの。魔王になりたいっていっていたのはワグマでしょ。ふさわしいふさわしくないで考えんな」
そう言ってくる。
善意からの励まし。ただ、善悪の感情があるかはわからない。パンドラの感情なんて友達である私はともかく、彼女の叔父夫婦も、誰も読めないらしい。
喜怒哀楽がめんどくさいっていう気持ちももしかしたらあるのかもしれない。昔から付き合ってなかったら正直友達にはなりたくない。言っちゃ悪いんだけどさ。
「もちろん、極悪非道さでいえば多分私が魔王だけどさ」
パンドラは前を見据える。
「王は、民衆を見捨てないんだよ。私には無理。すぐ切り捨てるから」
「そうだな。パンドラはそういうやつだ」
「ほんっとあなたって何考えてるかわからないわ……。そこがちょっと不気味」
「ひどいな」
「ならもっと感情を顔で表してよ……。たまに笑うぐらいじゃ本当に怖いんだって。もう引きずってないんでしょ? なら笑ってよ」
私はそう懇願した。
こういうことをいう私はきっと最低なんだと思う。最低な人物だという自覚はある。けど、笑ってほしいから。笑顔でいてほしいから。
私は、こういうことを聞く。人の気持ちなんて、わかるわけがないんだから。
「……引きずってないっていうのは嘘だよ。今も結構引きずってる」
「……はぁ」
「でも、ワグマが気にすることじゃないよ。そうするしかなかったんだから。最低な人間だから私って。
…そんなだんまりしないでよ。ゲームをしようよ。ほら、街を蹂躙しなくちゃね」
「……なんでこんな時だけ笑うのよ。道化師」
「なんであだ名増やすのかなぁ……」
パン子には決して人に言えない秘密がある。それを知ってるのは私とビャクロだけだ。
その秘密がパン子をやっぱり苦しめてるんだろう。でも、そういうことをしたんだから仕方ないとは思う。
「ほら、さっさとしないか。森の賢者が待っている」
「今行くー! ほら、ワグマ。いこう」
作者って過去に何かあった系女子が好きらしい。




